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むっくり起きてムックリ鳴らす。 [気になる音]

 北海道にお住まいの方から、ムックリ(mukkur)をいただいた。さっそく鳴らしてみる。学生時代に鳴らして以来、ずいぶんご無沙汰してしまったから、なかなかうまく鳴らなかった。でも、10分ほどいじっていたら、なんとかきれいな音が出るようになった。アイヌ民族の楽器は、このムックリ(口琴)と弦楽器であるトンコリ、それにカラプト(樺太)アイヌのカチョー(団扇太鼓)が知られている。でも、どちらかといえばトンコリもカチョーもアイヌモシリ北辺の楽器で、南部ではムックリがいちばんポピュラーなようだ。うまい人が弾くと、その響きは山から山へと響くそうだが、わたしが響かせる音など20mもとどいていないに違いない。
 素材は竹でできているのだが、北海道には“真竹”が生えていなかったため、多くは“根曲がり竹”で作られていた。中には、金属で作られているものもあるようだ。ちなみに、送っていただいたのは真竹のムックリだから、厳密には音色が少し違うのだろう。作りはしごく簡単なもので、竹を薄く削ってU字型にくりぬき、まん中に振動弁を切り込みにつける。その付け根に丈夫な糸をつけ、それを強弱に引っぱることで弁を振動させて音を紡ぎ出す。口元に当てて、口の開き方を工夫すれば多彩な音色が出る。とても単純な楽器なのだが、単純であればあるほど奥が深いのは、どの楽器にも共通して言えること。よほど長い期間、練習をつづけない限り、思いどおりのボリュームのある艶やかな音やメロディなど絶対に出せない。
 学生時代に、萱野茂さんが書かれた『アイヌの民具』(1978年)刊行運動へ参加したことがある。アイヌ民族が日常生活で使用していた、さまざまな民具を美しいイラストや写真で記録し、詳細な図版や解説を加えた豪華本として出版しよう・・・という運動だった。売れるかどうかがわからず、どこの出版社でも二の足を踏んで相手にしてくれそうもなかったので、いっそみんなでカネを出して出版しちゃえ・・・と進めた運動だ。結果は、予想以上の大きな反響で、北海道から沖縄まで2,500人を超える多くの参加者が集まり、本は1年弱ほどの短期間で出版。現在でも売れつづけ、すずさわ書店で版を重ねている。
 

 「先住民族」という言葉がある。米国やカナダ、オーストラリアなどでは、はっきりと彼らの位置を特定できるが、日本ではきわめて曖昧だ。おそらく朝鮮半島から侵入し寒冷地適応が済んだ新モンゴロイド系のSt遺伝子やHLA型白血球の因子、B型肝炎ウィルス(北方タイプ)などがクッキリとしている地域以外、日本ではほとんどが「先住民族」のエリア、すなわち本来の「日本」=原日本・・・といってもいいかもしれない。南方ポリネシア系の古モンゴロイド的な特色が濃い地域とは、もちろん北海道のアイヌ民族をはじめ、東北、関東、北陸、中部、四国、山陰、九州南部、琉球列島とほとんど日本列島の全域におよんでいる。大坂の商業資本が松前藩と結託して、渡嶋半島から「蝦夷地」全域へと進出しだしたころから数百年の視界でいえば、北海道の先住民族は間違いなくアイヌ民族やウィルタ民族だが、歴史のタイムスパンを千年単位に拡げれば、古来の原日本人たる「先住民族」とナラ(国/祖国・・・朝鮮語)に象徴的な「後侵民族」との関係は、より深淵なテーマとなって起立してくる。明治期以降から現在にいたるまで、教部省→文部省→文科省の歴史教科書では口をつぐみ、黙殺して決して語られなかった歴史の重要な1ページだ。
 「みんな同じ日本人じゃないか」あるいは「日本人になれ!」と恫喝され、苦しめられつづけてきた人たちのみならず、「日本人」っていったいなんだ?・・・と、そのアイデンティティを突きつめるほどに、単に「正史」のみからの文献史学的なアプローチばかりでなく、これら自然科学的、あるいは考古学的な成果物からの視点は、これからますます避けては通れない重要なテーマとなるだろう。
 わたしは、「まつろわぬもの」たちと呼ばれた人々の末裔であり、古代の「出雲王朝」と親密なつながりのあった「東王朝」の流れをくんでいる原日本人だ・・・などと、なかば夢見ごこちに想うことがある。そこには当然、関東地方のオキ(南武蔵)やオミ(北武蔵)、オクマ(上毛野)という一大勢力の存在と、もう少し東北へとスライドしたウクハウ、アザマロ、アテルイ、モレ、そしてツカル海峡をわたったコシャマイン父子なども、どこかで強く意識しているせいだ。江戸(エト゜=岬・鼻)にあった古代からの奉神のほとんどが、出雲神であることもきわめて象徴的だ。

■写真はムックリ(mukkur)。「ムックリ」の「リ」は、「ル」と「リ」の中間に近い発音。は『アイヌの民具』萱野茂(1978年/「アイヌの民具」刊行運動委員会)。


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ChinchikoPapa

こちらにも、nice!をありがとうございました。>さらまわしさん
by ChinchikoPapa (2014-04-19 21:12) 

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