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どうしてもわからない2枚の絵。 [気になる下落合]

 今回の「佐伯祐三-芸術家への道-」展では、全部で13点の「下落合風景」あるいはそれらしい作品を見ることができた。だが、先の同じ風景の3作と合わせ2作品の「下落合風景」については、それがどこを描いたものなのか場所を特定ないしは想定することができなかった。描かれたモチーフに、これといった特徴が見つからないのだ。
 上掲の絵は、1926年に描かれた「下落合風景」のひとつ。手前にある道路から、2棟の住宅を眺めたものだ。手前の道から左手の住宅へと入る、右に折れる小路のあるのがわかる。この小路は、おそらく右の住宅の前にも通じているのだろう。昭和初期、下落合に数多く建てられた和洋折衷の住宅だが、周囲には家がまばらであり、まだ開発されたばかりの区画のように見える。前面に柵で囲われた土地は、画面の右外に隠れて見えないお宅の庭だろうか?
 曇り空から薄陽が差しているが、光の色から西陽のように感じられる。右手の住宅の屋根近くに、青空がのぞいているところをみると、描いた方角は西なのだろう。雨雲が通りすぎ、天候が急速に回復している最中のように見える。草木がつやつやと光り、じめついた土の質感が感じられるので、まだ通りすぎたにわか雨の水滴が乾いていないようなのだ。このような道筋や家の配置、または住宅のかたちは、当時の下落合ではありふれた光景なので、場所がどこなのかわからない。昭和初期の空中写真を、かなりていねいにトレースしても、類似する場所が多すぎて見当がつかなかった。

 もうひとつの絵は、展覧会の案内絵葉書になっている、残念ながらモノクロでしか見られない作品だ。同じく、1926年ごろに描かれた「下落合風景」。こちらは、かなり特徴的な風景だと思うのだが、惜しいことに色がわからないため細かなディテールが不明だ。真っ直ぐに伸びた道には、親子連れらしい人影がのんぴり散歩しているのがわかる。左手には、2階建ての和洋折衷住宅があり、手前に門が見えている。正面の右手には、なにやら塔だかほっそりした西洋館のような構築物があるが、モノクロなのでいまひとつ形状がはっきりしない。目白文化村に設置された、いずれかの水道の給水タンク(配水塔)だろうか?

 別の角度から特徴をさぐると、電柱の配置とかたちが面白い。これは以前、ここにも書いた3枚の絵の道筋Click!を、逆方向から眺めたように見える。電柱の向きや姿を個別に検証すると、ちょうど上記の作品を正反対にした配置だ。支柱のある電柱や、変圧器が載った電柱の向きなど、位置関係がまったく同一なのに気づく。ということは、左手にある2階建ての住宅は、赤い屋根をしていることになる。家々の向きからすると、南北にのびる道だろうか。ひょっとすると、何枚も同じ場所らしい作品を描いているので、佐伯祐三がもっともお気に入りだった下落合の風景なのかもしれない。
 でも、この場所がどこなのかはわからない。他の絵もそうだが、佐伯の「下落合風景」にしては、人通りがかなり多い。目白駅か高田馬場駅に近い場所とも考えたのだが、このような住宅がまばらに建つ閑散とした道筋は、昭和初期の両駅周辺にはもはや存在しない。下落合駅や中井駅の開業は、これらの絵が描かれた翌年だ。やはり、目白文化村周辺の風景だろうか?

■写真:3点とも、佐伯祐三「下落合風景」(1926年ごろ)。


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ディスクジョッキー

お元気ですか。
今日のブログを見てもらうとわかるのですが
体調を崩してしまい今日でブログを終了する事になりました。日記リンクをして下さった事心より感謝します。
ありがとうございました。
by ディスクジョッキー (2005-11-03 03:39) 

ChinchikoPapa

せっかく始められたのに、とても残念です。毎日欠かさず更新されていたのが、お身体にさわったのでしょうか? どうか、くれぐれもご自愛ください。
これからブログ書きに本格的なリズムが生まれて、面白くなるところだと思うのですが、それを思うとかえすがえすも残念です。毎日ではなく、2日おきとか週に1~2回のペースで、お身体が回復されてから無理のないよう再開されるというのはいかがでしょうか?
by ChinchikoPapa (2005-11-03 11:54) 

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