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電子自治体の講師は韓国から?? [気になるエトセトラ]

 日本はxDSL+光ケーブル(ブロードバンド)の普及率と、その利用料の安さではおそらく世界一だろう。PLCの選択肢が増えれば、さらに回線料は下落するかもしれない。携帯電話やPDA類の普及率も世界一なら、パソコンの一般家庭への普及も、米国の64%(2005年)を大きく引き離して世界のトップクラスにいるのは間違いない。企業のネットをベースとしたERPやWebサービスの導入率も、また金融機関のネット決済率や端末設置台数も、おそらく世界のトップクラスにあるだろう。
 企業側の都合でなく、コンシューマ側の都合に合わせて、さまざまなサービスを24時間受けられる業務環境も、いまやあたりまえになりつつある。でも、そんな時代の流れをまったく受け入れないオフィスが、信じられないことだがいまだに存在している。公務員のオフィス=役所だ。
 今年、千葉県市川市で電子政府・電子自治体の本格的な構築をめざして、「情報化シンポジウム in 市川」が開催された。サブキャッチが、「市民の暮らしに役立つ電子自治体を目指して」。このシンポに招かれた講師は、日本の最先端の行政システムを開発しているベンダーのプロジェクトマネージャでもなければ、電子自治体を推進している日本の行政責任者・・・でもない。お隣り韓国の、ソウル特別市江南区の副区長なのだ。世界一のネットワーク環境と端末普及率を誇り、トップクラスのシステム開発力と技術力を保有するこの国が、なぜ自国の自治体のケーススタディを紹介し、推進主体であるプロマネを講師に招かないのか? 理由はカンタン、実は本格的な電子政府や電子自治体など日本には存在しないから、講師を招こうにも招けないのだ。
 では、ソウル特別市江南区では、なにが行われているのか? ちょうど東京の杉並区と同じ規模の同区では、1995年にインターネットが普及しだすころから、早くも電子自治体化への取り組みがスタートしている。つまり、ふつうの企業並みに時代の動きや、社会インフラの変革への波を敏感にキャッチしていることになる。いまでは、ミッションクリティカルな365日24時間ノンストップの行政サービスがすでに実現されている。証明書の発行は、すべてデパートや銀行、コンビニ、病院などに設置された自動交付機で、いつでもどこからでも受けられる。申し込めば、家庭のプリンタへ出力することさえできる。特に、病人や身体の不自由な人にとっては便利だろう。各種証明書の全発行数のうち、すでに50%がネット経由となっているそうだ。

 区庁舎内の電子決裁率はもちろん100%で、住民の納税もネットからのものが70%に達している。もはや住民は、特別な用事でもない限り、わざわざ区庁舎や地域センターの窓口へ出かける必要さえ、ほとんどなくなっている。この電子自治体化によって、区庁舎の資料保管スペースは従来の10分の1、職員数も2,041人(1995年)から1,307人(2005年)へと激減。住民にとっての節約効果は、窓口へ行くまでの交通費や所要時間などを試算すると、実に285億ウォン(約35億円)にものぼるそうだ。これらの数字や成果を、当の江南区が住民たちへ刻々と公開しているのもすごい。日本では考えられない、住民を第一に考えた自治体の真摯な取り組みだ。
 ネット環境も端末普及率もトップクラスの日本が、なぜこの程度のことに取り組めないのか、個人情報保護やセキュリティのテーマを踏まえたとしても、不可解としかいいようのない現実がある。いまだ役所の窓口へ出向いて、いちいち手続きをしている日本の姿が、海外から見ると奇異に映っていることにさえ気づかない、日本の官公庁や自治体のほうこそが「異常」なのだ。・・・そうか、講師をお隣りの韓国から連れてきた理由が、なんとなくわかった。「あれは、よその国のことだから」、「あれは外国のことで、日本の実情には合わないのです」・・・、そんな答弁を用意してそうな自治体役人の顔が眼に浮かぶ。
 今年の4月、ワープロや表計算のソフトで作成していた様式や資料類を、業務のワク組みに合わないから手書きにもどすよう指示を出し、職員たちからも呆れられた情けない某役所(中央官庁だ!)の実情でも紹介する、「反情報化シンポジウム in Japan」でも開催すれば、いかに実情がヒドイかがわかるはずだ。「日本の実情」に合わないのは、海外の電子自治体ケーススタディではなく、当の役人たちのアタマなのだということに、そろそろ気づいてもいいころだろう。

■写真:下落合の聖母坂にある落合第一地域センター。“箱”は立派なのだけれど・・・。
●図表:『日経コンピュータ』の「ニュースの読み方」より、江南区の電子自治体構築の効果。


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