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地面に刻まれた記憶の探し方。 [気になる神田川]

 神田川流域に展開した「百八塚」Click!の伝承と、戦後すぐの焼け跡だらけの空中写真に巨大なサークルClick!がいくつもとらえられているのを、以前に「下落合はミステリーサークルだらけ」Click!シリーズとしてご紹介した。わたしは、たまたま1947年(昭和22)に米軍が撮影した空中写真を見ていて気がついたのだけれど、現在のGoogle Earthを使って上空から地形や街並みを観察していても、おかしなことに気づくことがある。
 ずいぶん前に、下落合の氷川明神の境内が釣り鐘型をしており、そのかたちは1967年(昭和42)に十三間通り(新目白通り)ができるまで、そのまま保たれていたのを書いた。そして、その釣り鐘型のカーブに沿って家々が建ち並んでいる様子も、十三間通り(新目白通り)が貫通する前、1960年(昭和35)の空中写真で検証Click!し、このフォルムが前方後円墳の外郭にそっくりなことも既述した。ひとつの共通項として、地上に古くからなんらかのかたち(地面形状)が刻印されていると、その形状そのままに地割りや区画割りが行われ、道筋がつけられたりしていることの多いのがわかる。おそらく、これらの地割りによる地籍簿づくりは、江戸期から明治期にかけて実施されたものだろう。
 
 Google Earthを見ていると、現在においてさえ神田川や妙正寺川沿いに、上記のような“地面の記憶”が残っている区画を容易に見つけることができる。大きな企業ビルやマンションが建つなど、大がかりな地上げが行われて地面全体が掘り返されてしまった場所では、とうにその“記憶”は消滅してしまっているけれど、ふつうの住宅街あるいは寺院や社(やしろ)などの境内となっているエリアでは、いまだ土地の形状が色濃く残る道筋や家々の並びを上空から確認することができる。いや、この言い方はおそらく逆さまで、土地になんらかの記憶が刻まれていたからこそ、あえてその地を“聖域”とし結界を張りめぐらしたエリアが多い・・・ということだ。
 実は、江戸東京にある寺社のほとんどが、広い境内の場合は古墳群の真上に、あるいは小さな寺社の場合は古墳の墳丘上に築かれたことに、江戸期の資料を研究していて気づいた人物がいる。大正から昭和にかけての代表的な考古学者、人類学者でもある鳥居龍蔵だ。寛永寺のある上野台や本郷台、あるいは浅草寺のある浅草全域が、古墳の“巣”のようなエリアだったことがわかる。鳥居の研究詳細については、また改めてここでご紹介したい。
 以前にも触れたけれど、関東地方における古墳研究は大きく出遅れている。戦前までは、調査も満足になされないまま、道路工事や河川の整流化工事、宅地造成などで次々と貴重でかけがえのない墳丘が崩されていった。東日本には、歴史上で重要な古墳は存在しないという、おもに明治政府の成立以降に生じた考古学的あるいは科学的な実証をともなわない、ウソと錯誤に満ちた史観によるものだ。戦後に古墳から次々と第1級の資料が発掘されるにつれ、関東平野全域に展開する巨大な古墳群にようやく目が向けられるようになった。でも、都内に限っていえば、特に山手線内外に残っていた膨大な古墳群は、すでにほとんどが崩されて手遅れなケースが数知れない。既述したようになんらかの聖域、寺社の境内や富士講の“富士”、あるいは大名の庭園に築山として活用されたりした墳丘は、運よく開発をまぬがれて現在まで残存しているケースがある。
 
 都心でいえば東京タワーの傍ら、江戸期から芝増上寺の境内になっていたため、奇跡的にそのままのかたちで残された巨大な前方後円墳Click!の存在さえ、いまでは紹介されることも少なく忘れられがちだ。この芝丸山古墳については、江戸時代にたまたま発掘調査が行われており、それを記録した古文書が現存していることも判明したので、機会があったらまた紹介してみたい。大正期には、この丸山古墳ばかりでなく、増上寺の境内全体が十数基の古墳群(円墳)による集合体であることが、発掘調査によって確認されている。
 「坂東王国」のひとつ、南武蔵勢力圏である東京の南部は、さまざまな時期の古墳が集中する“古墳の都”としての、もうひとつ別の顔を持っている。

■写真上:早稲田通りの小滝橋交差点近くに見える、大きく地面に刻まれた人工的なサークル。
■写真中は、現在の同所。は、1947年(昭和22)の焼り跡。より形状がハッキリ見える。
■写真下は、富士講の“高田富士”Click!にされていた、早稲田の前方後円墳・富塚古墳。出土した玄室や羨道などは、水稲荷社裏に保存されている。は、1960年(昭和35)の富塚古墳。現在は早大9号館の下となっており、墳丘の表面を覆っていた溶岩は甘泉園公園脇に移されている。


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ChinchikoPapa

takagakiさん、いつもnice!をありがとうございます。
by ChinchikoPapa (2007-07-02 00:31) 

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