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下落合の「初体験」街歩きツアー。 [気になる下落合]

 先日、(財)日本ナショナルトラストClick!が主催される、下落合の街歩きツアーへお招きいただいた。目白・下落合界隈は街歩きがたいへん盛んで、散歩していると下落合駅方向から、あるいは目白駅方向から歩かれる方々を、わたしもずいぶんお見かけするのだけれど、自分がご案内するのはなにしろ初めてなので、慣れないぶんちょっとテーマに困った。
 なにしろ日本ナショナルトラスト会員のみなさんは、東京じゅう、いや日本じゅうに残る貴重な建築類(特に近代建築)をご覧になっていると思われるので、目がとても肥えていらっしゃる。だから、目白・下落合界隈(目白文化村含む)に残る近代建築をご案内するぐらいだと、「ここ来たことあるよ」とか「中も拝見したことあるわ」・・・とか言われてしまいそうで、ご覧になる方々も普通で面白くないだろうと想像していた。そこで、ちょっとディープな下落合巡りを企画してみた。
 ご用意したのは、1926年(大正15)の「下落合事情明細図」に1936年(昭和11)の空中写真、そして昨年「目白バ・ロック音楽祭」の写真展Click!に合せて作成した「目白・下落合歴史的建物のある散歩道」マップClick!だ。つまり、街を水平方向へと歩くのではなく、歴史的な経緯を含めた垂直方向も見つめていただけるような資料づくりに挑戦してみた。そして、近代建築の探訪は、できるだけ普段はあまり紹介されない建築作品(戸田子爵邸の移築建築や、わたしがボンヤリしていてすっかり見逃していた遠藤新設計創作所の小林邸、佐伯祐三「下落合風景」に描かれた現存T邸など)を選び、それらの物語とともに、なおかつ建築以外のテーマを多めに付加してみた。
 
 そのテーマとは、もちろん近代美術を中心とした芸術の物語だ。江戸末期の浮世絵の世界から近代洋画まで、貴重な建築めぐりと同時に、描かれた下落合の描画ポイントをめぐる企画を考えた。といっても、ツアーは下落合駅スタートで目白駅着の約2時間30分というスケジュールだったため、どうしてもほんの一部しかご紹介できなかったのが残念なのだけれど・・・。
 下落合をめぐる画家/美術家たちの軌跡として、ツアー順にご紹介したのが、三代豊国・二代広重、外山卯三郎、吉田博、佐伯祐三、鈴木誠、曾宮一念、満谷国四郎、竹久夢二、中村彝などの作品や描画ポイント、あるいはアトリエ(跡)に邸(跡)。また、岡田首相が226事件のとき隠れた佐々木久二邸跡をはじめ、徳川邸、「静観園」跡、第三文化村、酒井億尋邸跡、聖母病院(本館/チャペル)、下落合みどりトラスト基金Click!が保存活動を展開中の“たぬきの森”界隈、九条武子邸跡、相馬子爵邸跡(黒門跡)、ヴァイニグ夫人邸跡、東京同文書院(目白中学校)跡、近衛文麿邸跡、および近衛篤麿邸跡。そのほか、目白崖線の様子を観察していただくためバッケの自然ポイント(薬王院の森/野鳥の森/御留山の森)や、下落合の古墳群のお話なども欲ばって含めてみた。
 あんのじょう、時間内にツアーは終らず3時間近くになってしまい、豊坂稲荷をくだって金久保沢にあった大正時代の旧・目白駅前広場へたどり着いたときは、日がとっぷりと暮れていた。あともう少しで、下落合のタヌキ/オバケツアーでもできそうな時間帯になってしまった。熱心なご質問が多く、佐伯アトリエを建てた大磯の大工さんについて、古墳刀の鋼(目白)の折り返し鍛錬について、目白の現・徳川黎明会以前に建っていた戸田邸の移築建設業者について、外山卯三郎アトリエに集められた佐伯のパリ遺作について、聖母病院のフィンデル本館屋上に命中した250キロ爆弾と救援物資のドラム缶投下ルートについて・・・などなど、かなりマニアック(^^;なお話もさせていただいた。

 ただ、にわか作りの資料にも掲載し忘れ、せっかく目の前をご案内しながら、ついわたしがウッカリしてしまったポイントもある。諏訪谷に面した曾宮一念邸の東並びにあった洋画家・牧野虎雄アトリエと、近衛篤麿碑横の洋画家・安井曾太郎アトリエ跡だ。メモを取られていた方がたくさんいらしたので、ぜひイラストマップに両アトリエ跡を追加していただきたいと思う。
 たいへんあわただしい駆け足ツアーになってしまったけれど、拙い説明でも熱心に聞いてくださった20名の参加者のみなさん、ほんとうにお疲れさまでした、そしてありがとうございました。<(__)> 目白・落合地域の奥深い魅力の一端を感じていただけたら幸いです。また、拙い資料をごていねいにフルカラーで作成いただいた日本ナショナルトラストの田村様、ほんとうにありがとうございました。

■写真上:旧・学習院昭和寮(日立目白クラブ)へたどり着いたときは、たそがれどきだった。
■写真中:ツアーの様子。「下落合のここ、初めて来た」と言われる方も多く、とてもうれしかった。
■写真下:今回の街歩き用に作成した資料類の一部。なお、お手元の「散歩道」マップへ書き込みが多くなり、少しくたびれてしまった場合の新規補充先は、下落合駅近くならカフェ杏奴さんClick!、目白駅近くなら三春堂さんで販売中。


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谷間のユリ

ご無沙汰しています。素敵なツアーが開催されてたんですね。私も参加させていただきたかったです(^^ゞ生まれ育ったところなのに、知らない事だらけです。papaさんのおかげで新しい発見がいっぱい。実家に帰りたくなりました(笑)
by 谷間のユリ (2007-12-07 08:09) 

マイケル

素晴らしいツアーでしたね。是非「パート2」をご企画下さい。必ず参加させて頂きます。マイケル
by マイケル (2007-12-07 09:22) 

ChinchikoPapa

takagakiさん、nice!をありがとうございました。
by ChinchikoPapa (2007-12-07 13:01) 

ChinchikoPapa

谷間のユリさん、こちらこそご無沙汰です。コメントをありがとうございました。
ツアーでは、あまり詳しくご説明しますと季節がらすぐに日が暮れてしまいますので、ほんとうに駆け足でまわってしまい、参加者のみなさんはかなり疲労されたのではないかと心配です。それでなくても坂の多い街ですので・・・。nice!をありがとうございました。
谷間のユリさん、どうぞふるさとの下落合へ。(^^/
by ChinchikoPapa (2007-12-07 13:01) 

ChinchikoPapa

xml_xslさん、ご評価をいただきありがとうございます。
by ChinchikoPapa (2007-12-07 13:01) 

ChinchikoPapa

マイケルさん、コメントをありがとうございました。
記事でもおわかりかと思いますが、ちょっとテーマを欲張りすぎましたね。(^^; 下落合横穴古墳から落合遺跡まで古代遺跡をめぐるコースとか、アビラ村をめぐる物語コース、目白文化村コース、上落合と下落合の文学コース、下落合を描いた画家たちコース、佐伯祐三の描画ポイントコース、近/現代政治家たちの軌跡コース、落合のバッケと自然をめぐるコース、下落合の近代建築めぐりコース、落合怪談めぐりコース(爆!)とか・・・etc.それぞれテーマを絞らないと、水平ではなくタテの厚みのある街歩きは、かなり難しそうです。それだけ、目白・落合界隈は物語がいっぱい・・・ということなのでしょうね。
by ChinchikoPapa (2007-12-07 13:02) 

ChinchikoPapa

チャッピィーさん、いつもお読みいただきありがとうございます。
by ChinchikoPapa (2007-12-07 13:02) 

ChinchikoPapa

一真さん、いつもnice!をありがとうございます。
by ChinchikoPapa (2007-12-07 19:36) 

ChinchikoPapa

Krauseさん、ご評価していただきありがとうございます。
by ChinchikoPapa (2007-12-07 23:54) 

浅倉清史

民家町並みサークルの浅倉と申します。
昨年末の下落合見学会の際は、詳しい解説ありがとうございました。建物だけに興味をもってしまう癖がありますが、こういった文化的要素や住んでいる方々の生活を加味した見学会は、大いに有意義でした。
本日、先の見学会で頂いた「目白・下落合歴史的建物のある散歩道」マップを参考にして、前回行けなかった第一・第二文化村を見てきました。カラフルで美しく文化的解説があるだけでなく、その地図を持って歩いてみて、全て地図に載せてある建物を迷うことなく歩いて来れました。
ただいま、歩いてきてわからなかった所などを見ています。が、まだまだこの地域は奥が深そうですね。又行ってみたいと思います。
by 浅倉清史 (2008-02-23 20:21) 

ChinchikoPapa

浅倉さん、コメントをありがとうございます。
先日は、いたらない説明で失礼いたしました。マップをもとに、下落合地域をお歩きいただいたのですね。わざわざお知らせくださり、ありがとうございました。
先日、ご案内させていただきました旧・下落合の東部(目白駅寄り)も面白いですが、西部(現・中落合/中井2丁目)も物語の宝庫です。目白文化村を除き、西側は空襲の被害をほとんど受けていませんので、数多くの近代建築が残っていますね。これからしばらくの間、目白文化村とその周辺の記事をまとめてご紹介していく予定でいます。
その中で、また気に入られた物語や建物がおありでしたら、下落合(中落合/中井2丁目含む)へぜひ足をお運びください。
by ChinchikoPapa (2008-02-23 23:04) 

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