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たまにはヘビと遊ぼう。 [気になるエトセトラ]

シマヘビ1.JPG
 下落合界隈には、モグラやカエルが多い。ネズミもときどき、真黒な目をキラキラさせて道を横切ったりする。昆虫類も、オニヤンマを頂点とするトンボや各種セミ、チョウ類はもちろん、ときにナナフシやカマキリが網戸にたかっていたりする。都心にしては、虫がかなり多いエリアなのだろう。だから、それらを捕食する動物たちも必然的に数多く棲息している。食物連鎖のヒエラルキーの頂点に君臨するのは、もちろん肉食獣たる野良ネコたちだけれど、ネコと頂点の地位を分けあっているのが、毎年子どもが生まれるタヌキとヘビだ。今年は、タヌキの子どもたちが七曲坂近くで遭難Click!し、1匹死んでしまったのが残念だ。
 ヘビは、よほど住みよい土地柄なのか頻繁に見かける。わたしが家の周辺で目撃したヘビは、シマヘビ、アオダイショウ、ヤマカガシの3種類だが、崖線(バッケ)の斜面にはマムシもいるというウワサも耳にしている。これらのヘビたちは、ふだんは住宅の縁の下や天井裏(ともにアオダイショウ)、水辺の草むら、あるいは樹木の上などで生活しているのだけれど、ときどき獲物を追いかけてわれを忘れ、住宅の中まで侵入してくるから騒ぎになる。
 たいがい「キャーー!」という女性の声Click!で、「シマッタ! 獲物を深追いしすぎた」と気づき、ヘビたちは急いで逃げ出すのだけれど、中にはパニックになって湯船へ落ちてしまう子どもヘビもいる。ヘビは、すごくデリケートで臆病な動物だ。だから、人間のような巨大生物が目の前に現れたりすると、それだけでもうどうしていいのかわからず、ただひたすらジッとしているか、逃げ足に自信があれば、いや、足がないから逃げスピードに自信があれば一目散に身をくねらせることになる。それを恐竜のような巨大生物に見えるであろう人間は、「ヘビが襲ってきた!」などと被害妄想的に解釈したりするから、ヘビくんの側としてはまったく立つ瀬がないのだ。
シマヘビ2.JPG 水辺.JPG
 人間との身近な共生・共存の歴史が非常に長い、ときには“神”ともあがめられてきたアオダイショウは、ヘビの中でも人間に対する警戒心は、他のヘビに比べてそれほどでもない。言い方を変えれば、人間の存在には昔から馴れっこになっているということだ。だから、縁の下から這い出してくる2mほどの成蛇は、庭にいた奥さんにホースで水をひっかけられようが、土くれをぶっつけられようが、「わたしに敵意はありませんよ、これからも共存共栄しましょうよ」と、ゆったりしたスピードで逃げていく。ひょっとすると、人間にとって予測できない急激で敏捷な動きをすれば、敵意があるとみなされて殺されかねない・・・というところまで、大昔から学習をつづけた遺伝子にインプットされているのかもしれない。都会に住むアオダイショウの身のこなしは、人間に見つかっても意外に優雅でのんびりしている。エメラルドグリーンの宝石のような体色は、ジッと見とれてしまうほど美しい。
 わたしは、子ども時代を神奈川県の海辺で育ったせいか、ヘビのことを特におっかないとも気持ちが悪いとも思わない。むしろ、動物の中ではキレイ好きで清潔な生き物だと思う。湘南海岸の砂地はアオダイショウだらけ、川筋から野山はシマヘビとヤマカガシだらけ、そして鎌倉から三浦半島にかけてはマムシがいっぱいの土地柄だ。もっとも、現在ではその数が激減しているだろうけれど・・・。そんな中で遊んだり、山歩きをしながら高校生になるころまですごした。だから、ヘビとの遭遇は日常茶飯事。一度など、鎌倉の二階堂ヶ谷(にかいどうがやつ)の山で遊び、マムシがとぐろを巻いているところで弁当を食べていたことさえある。山林を整備していたおじさんが気づき、鎌でマムシの三角の頭を押さえてくれなかったら、不用意な動きをして噛まれていたかもしれない。でも、人間が緊張して必要以上に大騒ぎをしなければ、マムシだって襲ってくることはない。「攻撃」するから(攻撃とマムシに解釈されるような動きをするから)、噛みつかれるのだ。
 先日、ヘビと久しぶりに遊んでしまった。といっても、下落合の森ではなく目白のかなり向こう側にある小石川の森での話。水辺で日向ぼっこをしていた、まだ身体に斑点の残る1mほどの若ヘビくんを見つけて、しばらく様子を観察したあと身体にソッと触れたら、敏捷な身のこなしで逃げていった。それを脅かさない程度に追いかけて、笹薮に入ったところを近寄ってじっくり撮影してから、またちょっとスベスベの身体に触ってみたら、「この人間、追いかけてきたわ。しつっこいストーカーかも」と、全力疾走で再び逃げていった。これだけのサイズになっても、身体の斑紋が消えないのはアオダイショウの幼蛇だろう。もっと小さいサイズだと、シマヘビかアオダイショウかで迷うことがある。もともとヘビは、臆病で神経質な性格なのだけれど、パニックになるとつい人に噛みつく確率の高いのがシマヘビだ。まあ万が一噛まれたとしても、うちのネコほど痛くはないし、別にたいしたことはないのだけれど・・・。アオダイショウは逆に、ペットにできるほど人によくなつく。
野鳥の森1.JPG 野鳥の森2.JPG
 わたしが、もし生まれてからずっと東京の下町Click!あたりで育っていたなら、おそらくそのままヘビを「おっかない」あるいは「気持ちが悪い」という感覚になっていたかもしれない。未知のもの、よくわからないもの、ふだん見馴れないものに対する恐怖心から、ヘビを見ると理由もなく攻撃あるいは逃げ出す人がいるが、わたしもその仲間入りをしていたかもしれない。でも、わたしはヘビたちが人間という存在に恐怖し、非常に気をつかいながら生きているのを観察しながら育っている。
 ましてや、新宿区の下落合や文京区の小石川など、東京の真んまん中で暮らしているヘビたちなら、周囲は人間だらけなのでよけいにタイヘンで、気苦労の多い生活だろう。そんな東京育ちのヘビたちにちょっと同情しつつ、その姿をめずらしく人の前に見せてくれたときには、少しばかり近づいていっしょに遊んでみたくなるのだ。

■写真上:若いアオダイショウは、「巨大生物は去ったかな?」と舌の熱センサーで確認している。
■写真中は、「ダメだ、まだ近くにいる!」と大急ぎで逃げ出す体勢。は、ヘビたちが大好きな水辺の環境。こういうところで、小型動物や昆虫がやってくるのを待ち伏せて捕食する。
■写真下:家の近くにある野鳥の森公園で、周辺にはシマヘビとアオダイショウが棲んでいる。


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コメント 14

ももなーお

おひさしぶりです。懐かしいなぁ、目白台や下落合。目白台も、下落合と同じく、蛇だらけって言ってもいい位いっぱいいますね。

じゃあ、もっと都心から離れた三軒茶屋あたりはどうかというと、これが意外と見かけないんですよねぇ。うちにも庭があるし、庭付きのうちが結構あって緑は多いし、すぐ近くに蛇崩川の緑道があるんですけど、見たことないですねぇ。どうなってんだろ?

それだけ下落合から目白台あたりは自然が多いってことでしょうか。

by ももなーお (2008-06-24 09:35) 

mustitem

蛇まで含めて,
本当にここのところ小動物を見ていません。
共存,難しいですね。
by mustitem (2008-06-24 10:17) 

ChinchikoPapa

札幌が涼しくてうらやましいです。きょうの東京は、梅雨が明けたようにカンカン照りの真夏日です。nice!をありがとうございました。>納豆(710)な奇人さん
by ChinchikoPapa (2008-06-24 10:32) 

ChinchikoPapa

熊井商店は何度も前を通っているはずですが、意識して見ていませんでした。今度、覗いてみたいと思います。nice!をありがとうございました。>一真さん
by ChinchikoPapa (2008-06-24 10:35) 

ChinchikoPapa

ももなーおさん、コメントをありがとうございます。
新宿区でも神楽坂や市ヶ谷あたりの外濠沿いや、内濠のある千代田区でもヘビを見かけることがありますが、どうやら樹木や水辺のみどりだけでなく、エサになる獲物の種類や数も、微妙に関係しているものでしょうか。
それから、開発のされ方にも違いがあって、目白崖線界隈は江戸期から一度も掘り返されていない急斜面、言い換えますと昔から宅地開発に適さない崖地がいまだ多く残っていますから、手つかずの環境を基盤にかろうじて生き残ってきたのかもしれません。それが、一度すべて地ならしされて宅地開発されてしまったところは、いくらみどりが多くても小動物は少ないし棲みにくい・・・ということかもしれませんね。
by ChinchikoPapa (2008-06-24 10:51) 

ChinchikoPapa

mustitemさん、コメントとnice!をありがとうございます。
先日の、仔ダヌキの遭難でも感じたのですが、小動物にとって住宅街は危険がいっぱいの「ワナ」だらけ・・・という環境ですね。成体なら、ネコでもタヌキでもヘビでもなんでもないバルコニーが、幼体だと命取りになってしまいます。ほんとうに共存は、難しいですね。
by ChinchikoPapa (2008-06-24 10:57) 

sig

懐かしい姿を見せて頂きました。
実は今日、晴れたので、午前中は山に行ってヘビでも探そうかと出かけたのでした。よみうりゴルフカントリーの反対側はうっそうとした森なのですが、あまり藪には入らず、小道を辿ったくらいではダメらしく、小さい蝶とバッタを見たくらいで、がっかりして帰りました。
今住んでいるあたりは2年前まではド田舎だったのに、もう10年も前からトカゲすら見ることはありません。この時期でも雨蛙一匹見かけませんから、ヘビがいるはずもありません。寂しい限りです。こうした小動物が生息できる環境とは、やはり大きな変化を経たことがないことが条件になるのでしょうね。
by sig (2008-06-24 19:57) 

ChinchikoPapa

オイゲン・キケロやジャック・ルーシェのバッハからJAZZを聴きはじめた方は、わたしの周りにけっこういます。nice!をありがとうございました。>xml_xslさん
by ChinchikoPapa (2008-06-24 23:43) 

ChinchikoPapa

大倉山記念館は、「裁判所」や「研究所」としてよく映画やドラマへ頻繁に登場しますね。(^^ nice!をありがとうございました。>takemoviesさん
by ChinchikoPapa (2008-06-24 23:49) 

ChinchikoPapa

sigさん、コメントとnice!をありがとうございます。
わたしは、わるいクセで脇道・寄り道が好きですので(^^;、それでよけいにアオダイショウだのマムシだのに出会うのかもしれません。山へ入っても、道を外れるのが大好きな性分ですから、遭難するならきっとわたしのような人間でしょう。
ゴルフ場の近くは、除草剤や農薬の散布で虫たち小型動物が少ない可能性がありますね。また、土壌に染みこんで水源地を汚染していたりすると、川の生物も生きにくいのかもしれません。夏は亜熱帯の日本で、広大な芝原を維持するのは非常にむずかしいというのを聞いたことがあります。
by ChinchikoPapa (2008-06-25 00:03) 

ももなーお

>一度すべて地ならしされて宅地開発されてしまったところは、いくらみどりが多くても小動物は少ないし棲みにくい・・・ということかもしれません

なるほど、そういう事なんですかねぇ。カエルは庭に住み着いているですけどね(笑)
by ももなーお (2008-06-25 09:25) 

ChinchikoPapa

カエルがいるということは、捕食する虫が多いということですので、そのうちヘビももどってくるかもしれませんね。でも、「あ、ヘビがもどった! うれしいな」という声よりも、「キャーッ」とか「ヒーーッ」とかいう悲鳴のほうが、相対的には多いとは思いのですが。(^^;
by ChinchikoPapa (2008-06-25 10:35) 

ChinchikoPapa

水面に揺れて映るみどりも、美しいですね。みどりが明るいいまの季節が、いちばんきれいなのでしょうか。nice!をありがとうございました。>takagakiさん

by ChinchikoPapa (2008-06-26 00:05) 

古田

つい最近「大倉山坂」(という名をつけられていると最近になって知りました)途中の脇にある空き地で、夕方タヌキのカップルを見掛けました。メスらしい方はお腹が膨れている風でした。ところがその直後からそこで新築工事が始まってしまい、どうなってしまったのか心配です。
青大将もときどき見かけますね。ゆうゆう道路を横切っていたり。昨年氷川神社脇の道で車に轢かれたらしいのを見たときにはちょっとかわいそうに思いました。
蛙はオトメヤマ公園に生息してますが、この数年産卵してもオタマジャクシに育たないようで、絶滅の危機なのではと心配しております。すでにアカガエルはいなくなったし。ヒキカエルも産卵期に観察される数がかなり減りました。
去年に続き、今年もカルガモの雛は産まれなかった
公園内の生き物についてのデイタは、管理者は把握してないらしくて、それも残念におもっておりますよ。
by 古田 (2013-06-08 09:16) 

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