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「現代住宅」の嚆矢・小林邸を拝見。 [気になる下落合]

小林邸.jpg 小林邸居間.jpg
 遠藤新建築創作所の設計士・山村伍一郎が、1933~34年(昭和8~9)に手がけた小林邸Click!の建設で苦労したのは、いまだ当時の大工にメートル法が通用せず、間尺で計算せざるをえなかった点のようだ。施工主からは、できるだけ広くゆったりとした間取りを・・・という注文があったのだろう。メートル法で設計したほうが、一寸ニ寸の間尺規格に制約を受けることなく、自由でのびのびしたデザインにできたからだと思われる。
 ところが、大工がメートル/センチを理解できないので、従来のように間尺を用いることになったのだが、その計算法に「関西間」を採用して、少しでも広めのスペースを確保することにしたらしい。1934年(昭和9)に発行された『婦人公論』5月号から、山村自身の言葉を引用してみよう。
  
 (前略)この設計には俗に関西間即ち六尺三寸を一間として造つてあるので、前に述べた坪数が一割一分だけ増すことになり、約四十七坪の家となつて居ります。/何故、関西間即ち六尺三寸間を使用したかに就て申し上げませう。従来の日本家屋に使用されてゐる間尺の単位には関東と関西に依つてその単位が異つて居るのです。(中略) 関西間を使用しても、既製材で大した無理もなく間に合せることが出来るのです。建築費は多少づゝの割増は生じて幾分か増すこともありますが、それは極めて僅かなことで済み、それに幾倍か勝る有益性----即ち一間を三寸多くした為に建築費は余り変らず各室に余裕が出来、何となく広いのんびりとした住宅になる----を持つて居るのです。
                         (同誌「関西間を用ひた明るくて便利な中流住宅」より)
  
小林邸間取図.jpg
小林邸食堂.jpg 小林邸書斎.jpg
 小林邸の大きな特徴は、大正期から昭和初期にかけての一般的な住宅とは異なり、応接室あるいは客間と呼ばれる部屋が、すでに存在しないことだ。つまり、住宅の中でもっともいい位置を占める部屋が、家族たちの集まる中心スペースとして設定された。東側の食堂に隣接して、17畳大の広い居間が設けられ、この部屋が邸内の中心として設計されている。来客の場合は、この広いリビングに通されるのであり、客間や応接室といった概念はあえて省略され、あくまでも家族の居住性を最優先している点が、まさに今日の住宅建築におけるコンセプトそのままなのだ。
 ここに、江戸期から延々とつづいていた、来客を応接する部屋が邸内ではもっともおカネをかけた豪華な仕様で、方角的にも南向きの好位置を優先的に占める・・・という住宅の設計思想が、ようやく終焉したことを物語っている。いまにつづく日本住宅の建て方の基礎が、この時期あたりで確立された様子がうかがえるのだ。
 それまでの西洋館や和洋折衷住宅(文化住宅)によく見られた、南の庭に面してオシャレな出窓を持つ応接室は、すでに現代型の小林邸には存在しない。そのかわり、居間につづく9畳大の食堂との間は、ガラス戸による簡単な間仕切りで、大人数の客が集まるパーティなどでは、居間と食堂との間仕切りを取り払って、大きな広間を確保できるという工夫がほどこされている。この設計なども、きわめて今日的な住宅に直結するフレキシビリティあるいはスケーラビリティだろう。
小林邸子供部屋.jpg 小林邸和室.jpg
小林邸トイレ.jpg 小林邸門.jpg
 小林邸は、近衛町Click!目白文化村Click!に数多く建てられた大正期のモダニズム邸宅とは、本質的に異なる造りをしている。邸内でもっとも長い時間をすごす家族が、いちばん快適かつ便利に暮らせるよう、すべての部屋の間取りや採光などの居住性が考慮され、一時的な来客などの“他人”はあくまでも二の次なのだ。邸宅自体の建築費のほかに、もっとも経費をかけた設備が水洗トイレと浄化槽の設置だったというのも、暮らしやすさの追求から生じた切実なニーズなのだろう。
 遠藤新建築創作所の山村設計士が採用した家造りの考え方は、戦後の住宅設計においては、しごく当たり前で一般的な概念となっていった。現代住宅を先取りしていた小林邸は、ほとんど増改築を必要としなかったのか、いまでも建築当初の美しい姿をそのままとどめている。

■写真上は、建築当初の姿そのままの小林邸。は、大谷石の暖炉が目を惹く居間。
■写真中は、小林邸の間取り図。は、居間に隣接した食堂(左)と書斎(右)。
■写真下は、2階の子供部屋(左)と来客などに備えた予備の和室(右)。下左は、設備でもっとも注力された水洗トイレで、当時は洋式便器がまだめずらしかった。下右は、門の外から邸を眺めたところ。樹木が大きく育っただけで、邸の様子はほとんどまったく変わっていない。


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ChinchikoPapa

秋刀魚とライム、よく合いそうです。うちでは秋刀魚とスダチが多いですが。w
nice!をありがとうございました。>xml_xslさん
by ChinchikoPapa (2008-09-25 10:34) 

ChinchikoPapa

竹の手すりというのは秀逸ですね。すべらず、手にフィットして安全そうです。
nice!をありがとうございました。>一真さん
by ChinchikoPapa (2008-09-25 10:59) 

ChinchikoPapa

マンホールのデザインがいいですね。ヤマメでしょうか・・・。
nice!をありがとうございました。>takagakiさん
by ChinchikoPapa (2008-09-25 17:50) 

ChinchikoPapa

ときどき手入れをしてやらないと、カメラのファインダーの中にはカビが付着しますね。nice!をありがとうございました。>sigさん
by ChinchikoPapa (2008-09-26 20:57) 

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