少し前の9周年記念日、ちょっとオマジメでしおらしい記事を書きながら、その舌の根も乾かないうちに、こんなオバカでくだらない記事が登場するので、このサイトはまったく信用ならない。
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「しかし、金山さんと人くんは、杏奴Click!から目白文化村Click!に引っ越せてよかったぜ」
「あのな~、ソミヤはんClick!、ほんまでっせ」
「なにしろ、刑部さんちだてんだから、ひと安心だしな」
「あのな~、金山センセClick!ゆうたら、また文化村で、踊ってはんのとちゃうやろか?」
「それに比べりゃ、サエキくん、オレたちゃ宿無しで行くとこなしだぜ」
「なんや知らん、わしら放浪の画家ちゅうてな、長谷川リコーClick!みたいんなっとんのや」
「正月が近いてえのに、困っちまった。情けないったらありゃしねえぜ・・・ったく」
「こん前な~、ちぃとわしのアトリエClick!顔出したらな~、オンちゃんがな、責めよるねん」
「そりゃ、なにかい、サエキくん。サバClick!の一件かい?」
「あのな~、杉邨はんのカニ食べた~、ひとりで全部カニ食べた~ゆうてな、責めよるねん」
「・・・食いもんの恨みが、サエキ家じゃ、87年間も祟ってるてえわけかい?」
「そやかて、ぎょうさんのカニな~うまいさかい、やめられまへんがな。カニ道楽や~」
「しゃあがねえなぁ、サエキくん。・・・いっしょに、米子さんClick!に詫び入れてやろうか?」
「あのな~、ソミヤはん、もうええねん」
「もういいってことあるかい。このままじゃ、『下落合風景』Click!のタブロー描けないじゃんか」
「あのな~、オンちゃんは栄子ちゃんClick!に誘われてな、女流画家協会ちゅうの入っとんねん」
「そりゃ、オレも聞いてるさ」
「ほいでな~、いつの間にかな、わしのアトリエがオンちゃんのアトリエんなっとんのや」
「・・・すっかり、アトリエごと占領されたてえわけかい、サエキくん」
「そやさかい、わし、外でな~、仕事するしかないねん」
「そりゃ、お気の毒だわな。同情しちゃうよ」
「あのな~、こん前、台風ん中で描いとったらな、キャンバスがどっかへ飛んでってもうた」
「そいえば、大阪でも風に飛ばされて、泥だらけになった画布の話があったっけな」
「あちこち探しとったらな、顔と制服がバーミリオンの警官歩いとったさかい、知らん顔したわ」
「・・・・・・じゃあ、しかたねえからさ、ツネさんのアトリエにでも厄介んなるかな」
「ソミヤはん、そこいこそこ。・・・画道具がえろう重たいさかい、早よいきまひょ」
「でも、二科のオレたちが文展・帝展のツネさんちに押しかけてさ、厄介んなるってど~よ?」
「かまへんかまへん」
「官展のアカデミズムてえやつだけど、いいのかい?」
「かましまへんがな。あのな~、ミギシくんの弁証法Click!ちゅうのんは、たいしたもんやで」
「へ翁のアンチテーゼの、そのまたアンチテーゼで、螺旋に上昇するてえやつかい?」
「ウンチテーゼでもなんでもええさかい、早よいきまひょ」
「・・・ウンチじゃなくて、オレはアンチだと思うよ、サエキくん」
「これからな~、どんどん寒うなるさかい、ど~でもええがな」
「なんだかさ、サエキくん。性格がだんだん、いい加減になってるみたいな気がすんだけどな」
 
 
「はっはっはっ、はっはっはっ・・・」
中村センセClick!な~、アトリエの前で、もう笑ってはるがな~」
「うん、どうやら高笑いで上機嫌だし、こりゃ泊めてくれそうだぜ、サエキくん」
「やあ、キミたち。やっぱり、ボクのアトリエを訪ねてきたね。はっはっはっ」
「ツネさん、そういうわけでさ、少し厄介んなるけど、いいかい?」
「ああ、いいとも。ソミヤくんに、え~とキミは誰だっけ・・・確か、サエキくん、だったかな?」
「ツネさん、アトリエきれいに復元できたじゃねえの。ちゃんと、元どおりの仕上がりさね」
「うん、ソミヤくん、ありがとう。これも、優秀な復元PJTのおかげさ。はっはっはっ」
「あのな~、庭にな、大島帰りの傷心ツバキまで、ちゃんと植わっとんのや~」
「傷心ゆーな!」
「シーーッ、厄介になるんだから、あんまし余計なこたぁいうなよ、サエキくん」
「門で立ち話もなんだから、まっ、入りたまえ、キミたち。はっはっはっ」
「これ、えろう重たいがな~。中村センセ、あんじょう頼んますわ」
「あ、ツネさん、オレの画道具もお願いするよ」
「なんでボクが、キミたちの引っ越し荷物を、持たなきゃならないんだ?」
「まあ、ええがな。天下の中村センセが、細かいこと気ィせんと」
「・・・ボクは、旅館の番頭でも、アート引越センターでもないんだよ!」
「あのな~、林泉園のサクラんとこにな、イーゼルも置いてあるさかい」
「・・・ボッ、ボクは、ザキヤマじゃないんだよ!」
「ほう、ツネさんの代表作が、ちゃんと管理棟に並んでるじゃないの」
「やあ、気がついたかい、ソミヤくん」
「こりゃ、立派なもんさね」
「誰かのアトリエとちがって、ボクの作品は最初からカラーコピーじゃないのさ。はっはっはっ」
「額も高そうだぜ、ツネさん。こいつぁ、おそれ入谷の鬼子母神(きしもじん)だ」
「ボクの作品はとっても貴重だからさ、並んでいるのはホンモノじゃなくて特注印刷のレプリカなのが、非常に残念なんだけどね。はっはっはっ」
「おい、サエキくん、観てみろ。第8回文展の『少女』Click!があるぜ」
「ほんまや、俊子ちゃんやし」
「シーッ、これ、ツネさん27歳の作だけど、俊子ちゃんはまだ16歳になったばっかだぜ」
「わし~、中村センセの少女趣味、ぜんぜんわからへんのや~」
「うん、オレもさっぱりわからんが、いま風にいえば“萌え~~”てえやつかね」
「あのな~、ヴィーナスはんにも見えへんし、どこがええんやろな?」
「そうそう、まだ子どもじゃねえの。ツネさんは、どっかヘンな趣味してんだよな」
「ほんまやし。15、6の小娘な~、追っかけても面白(おもろ)ないで」
「それがさ、2尺足らずの長脇指(ドス)を腰にぶちこんで、中村屋に斬りこんだてんだからさ」
「ほんま、ストーカーやがな。早よ警察に連絡せな、あきまへんがな」
「うんうん、たまげた雑司ヶ谷の鬼子母神さね」
「シ~ッ、ほんまはな~、デッサンの王者Click!やのうて、危ないヲッサンの王者、ちゃうやろか?」
「うんうん、エロシェンコClick!がさ、“エロさん”てえんじゃねえやな」
「ほんま、中村センセがな~、けったいなエロはんちゃいまんの?」
「・・・ソミヤくんに、え~とキミは、サエキくんかな、そこでなにをコソコソ世間話してるのかね?」
「あのな~、中村センセな、LAOXの紙袋とか好きでっか~?」
「そうそう、ツネさん。萌え~~のAKBとか、乃木坂じゃ誰が好きなの?」
「・・・あのね、新宿中村屋はね、メイド喫茶じゃないんだよ!」
「ちゃんと聞こえてはるがな、ソミヤはん」
「胸は悪かったけど、昔から耳は地獄耳でいいんだよ、ツネさんは」
「さっさと、入りたまえ。キミたちを泊める部屋は、アトリエをずーーっと通りこして、台所の隣りにあるキイおばさんの三畳間だからね。ボクのアトリエには絶対、入らないでくれたまえ」
「・・・三畳間ってさ、ここでふたりとも寝起きして、仕事するのかい?」
「あのな~、殺生やで。イーゼルひとつ置いたら、いっぱいやがな~」
「くれぐれも畳に絵具をつけたり、汚したりしないようにな。・・・キミたち、文句があるなら、別にソミヤくんの駐車場でも、サエキくんの大好きな山手線のガード下Click!でもいいんだよ」
鶴田くんClick!みたいにさ、ちょいとアトリエの隅を貸してくれたっていいじゃん、ツネさん」
「そやそや、わしのアトリエよりな~、ぎょうさん面積あるやん」
「ダメだね。ここは、90年ぶりに復活した、ボクひとりのアトリエ空間さ。はっはっはっ」
「・・・ソミヤはん、中村センセしょうもない、しぶちんやで~」
「ほんとだよな、サエキくん。ツネさん長生きしたらさ、ちょいと性格が悪くなった気がするぜ」
 

「ツネさん、おはよう! ・・・どこだい、はばかりかな?」
(ああ、ソミヤくん、夕べはよく眠れたかい?)
「・・・おかげで、サエキくんとひとつ布団で、べらぼーに気味(きび)悪く、ぬくぬくできたさ」
(そりゃよかった、なによりだな、ソミヤくん。はっはっはっ)
「夜中にさ、ネコや~ネコが出たClick!んや~って叫ぶから、思わず石を探しちまったぜ」
(寝言のネコに、Click!はぶっつけられないね。はっはっはっ)
「ところで、ツネさん、オレもはばかり、使いたいんだけどな」
(まあ、少し待ってくれたまえ。夕べカルピス飲みすぎて、やや下り気味なんだ。はっはっはっ)
「オレも、ちょいと、我慢の、限界なんだ、ツネさん。はばかりは、ひとつだけなのかい?」
(10時から管理棟の便所が開くよ、ソミヤくん。ところで、さっきからこの臭いはなんだい?)
「ああ、サエキくんが、朝っぱらから、すき焼きを食いたいてえことんなってな」
(・・・すき焼き?)
「うん、畳に七輪持ちこんで、カンテキすき焼きは久しぶりや~・・・とかなんとかいってたよ」
(おいおい、火事になったら、どうするんだい?)
「大丈夫、危ないからカンテキ・・・じゃない七輪は、もう台所に持ってかせたよ」
(ねえ、ソミヤくん、サエキくんの監視をくれぐれもお願いするよ。あいつ、復活したボクの美しいアトリエでなにをやらかすか、知れたもんじゃないからね。よく、見張っててくれたまえ)
「わかったからさ、それより、ツネさん、早く、出てくれないかな」
(もう、そろそろだよ、ソミヤくん。はっはっはっ)
「オレのあとには、サエキくんも順番待って、つかえてるんだからさ」
(・・・サエキくんも?)
「うん。でもツネさんがなかなか出ないんで、シビレ切らしてさ」
(・・・・・・)
「いま、外が気持ちええがな~って」
「・・・ケモチええ?」
「ああ、庭を散歩してるよ」
「・・・・・・待て待て待て待て、ちょっと待てー!」
「どうしたんだい、ツネさん? ズボンも上げずに、血相変えてさ・・・」
「確か、サエキくんとかいったよな! あいつ、どこいったー!?」
 

 
「・・・シィこいこい、ババこいこい、富士山も、芝生も、ツバキも、屋根もきれいやな~」
「こらこらこらこら、こらーーっ! サエキー!!
「中村センセ、おはようさん。きょうも、ええ天気ですがな」
「ええ天気ですがな~じゃない! 人んちのテラスで用を足すなー!!」
「あのな~、秋空見あげてな、バーミリオンの屋根が芸術の無限感や~」
「野グソ庭グソ禁止! ついでに、ボクのアトリエは、ぜ~ったいに描かないでくれたまえ!」
「・・・なんでですのん? 八島はんちClick!みたいで、わしの下落合風景にピッタリやで~」
「ボクのアトリエは竣工したばかりで、鄙びて古くてボロくてバッチくはないんだからね!」
「ここのな、ボロいドアや、ボロい外壁や、ボロい窓の部材そのままが、ごっつええがな~」
「ボロいボロいゆ~な!」
「あ、しもうた。・・・あのな~、わし、紙忘れてもうた」
「だから、どうした!?」
「センセの木炭紙でええさかい、よくもんで貸してんか~?」
バッバッカヤロー! 誰が貸すかー!!」
「・・・なんや知らん、劉生センセみたいやで」
「劉生ゆーな!」
「ほな、この葉っぱでええわ」
「ボッ、ボクの大切なアオギリを・・・こ、こらっ、むしるんじゃない!!」
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 ということで^^;;;、結局、サエキくんとソミヤはんは、復元されたばかりの中村センセのアトリエへ、とりあえず寄宿することになったようだ。でも、翌日からとんでもない事件が起きてしまったようで、中村センセは気が気ではなさそう。踊り好きな金山センセと人くんは、目白文化村の刑部昭一様Click!のもとへ落ち着き、これで下落合を宿無しでウロウロする画家は、新宿・旭町のアンパクないしはボクチンから繰りだす長谷川リコーClick!ぐらいになっただろうか。サエキくんとソミヤはんの会話にも出ていた、このころのミギシくんがなにをしていたのかは、さだかでない。

◆写真:中村センセのアトリエに押しかけた、サエキくんにソミヤはん。
※この物語はフィクションであり、実在する人物や施設とはなんら関係ない…かもしれません。
★杏奴のママさんからお便りをいただき、足利市で「カフェ杏奴」を再開するそうです。詳細がわかりしだい、こちらで改めてご紹介します。