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ストレスがたまると堪忍袋の緒がゆるむ。 [気になるエトセトラ]

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 なんだか、新型コロナ禍の影響で思いどおりに身動きできず、2年間のストレスがたまっているせいか、ちょっとしたことで腹を立てることがある。精神衛生上よろしくないのだけれど、堪忍袋の緒がゆるんでいるのが自分自身でもよくわかる。以前なら、「まあ、そういうこともあるかもね」とか「しゃあがねえなあ」で済んでいたような課題やテーマが、許容範囲が狭くなっているせいかムカッ腹が立つのだ。
 たとえば、こんなことがあった。知人の子どもが小学校へ通っていて、COVID-19の変異ウィルスが蔓延しているにもかかわらず、子どもたちが登校して教室へ集まるのをやめさせようとはしない。当然、感染する生徒とその家族が続々と出て、当該のクラスはもちろん学年全員が検査のうえ、陽性者がでたら全員が自宅待機になる。そこで、知人の親が教育委員会に連絡を入れ、感染の危険性や懸念を最小化するために、自宅でのリモート授業ができないかと問い合わせたところ、教育委員のひとりなのだろう答えていわく、「授業が遅れるし、教育に不平等が生じるからできません」とのたまわったとか。
 この回答を聞かされたとき、わたしは意味不明だった。知人によれば、自宅で端末を導入できる子とできない子、あるいは性能のいい端末とそうでない端末とでは表示性能がちがうし、通信環境にも差異が発生して平等性が保てないから、そして教員のスキルがまちまちで対応できないから……という回答だったそうだ。この言質、教育委員の方は自分でいっていて、自身の言葉になんら不可解さや不自然さを感じなかったのだろうか? 民間の組織で、こんな没主体的でオバカな回答をしたら、わたしが上司なら即座に叱責か勤務評定に×印、あるいは厳格で狭量な上司だったら即座に異動(左遷)だろう。
 「不平等が生じるからできない」のではなく、そのような要望や課題が直接自身の役職に寄せられたとしたら、既存の体制からあれこれいいわけを探しだして並べるのではなく、現在の状況に対する危機管理の意識を踏まえ、どのような施策なら「不平等が生じないように、どうしたら教育を安全に継続・維持できるのか」を考えて検討し、実施できるかどうかを企画・案件化して実現へ向けて努力するのが、あんた自身の仕事なんだよ……というのが、どうやら当人には理解できていないようなのだ。
 教育の現場ではなく、あたかも他人ごとのようなコメントをする、どこか別の次元や地平に立ったヒョ~ロン家のような、主体性のない回答を臆面もなくする人間が、自治体の重要な教育委員というポストに就いていること自体にも唖然とするが、これほど役人の世界には「仕事ができない(をしない)人間」または「使えない人間」が多いのだろうか? もちろん、この教育委員のような人物ばかりではないのだろうが、もう少し上記のような問い合わせに対しては回答のしかたを、特に自身の立場と自身の役職や仕事を、十分にわきまえた上での表現に留意すべきだろう。
 「〇〇〇はできない」という回答は、あらゆる可能性を検討し、それにもとづいて課題を解決する方策を企画して、なぜ「できない」のか、どこに障害があるのか、その障害をどのように取り除けば解決し、実施できるのかどうかを現場で多角的に検証・立案したうえでのものならばともかく、ハナから「できない」という回答は通常の(あたりまえに機能している)組織では、ありえないことだというのを肝に銘じるべきだろう。
 事実、子どもや家族(特に感染すると生命が危うい高齢者のいる家庭)が心配な親たちから、同様の声が数多く教育委員会へ寄せられた各地の自治体や学校では、「できない」はずの全校生徒への端末支給と、教員のスキルアップにともなうリモート授業が現実に「できている」、難なく実現している都内の事例があちこちにあるのを見れば明らかだろう。自分自身の立ち位置や役職をよく理解し、自分の仕事とはなにかをよく考えてわきまえ、トンチンカンなタワゴトを口にせず、ちゃんと当りまえの仕事をしてくれ……それだけだ。
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 さて、役所(役人)への文句ばかりでは後味が悪いので、一所懸命に何代もの役職にわたって地道に仕事をつづけている人たちもいることを書いて、少しは擁護してあげたい。たとえば、都内には頻繁に工事が行われている公園や空き地、公共敷地、あるいは河川敷などがある。何度も同じところを掘り返したり、同じ敷地でもとっかえひっかえ場所をずらして掘り返していたりする。もっとも、(城)下町Click!に多く、戦前は外周域だった山手あるいは新乃手ではあまり見かけない光景だろうか。
 工事現場を見ると、たいがい「整備工事」というような、抽象的な名目(タイトル)の看板が掲げられた養生が張られるのは、区有地や都有地など公有地がほとんどなのだが、事情を知らない方は、「しょっちゅう予算消化のムダな整備ばかりして、工事の音がうるさい!」などと、自治体に文句をいったりする。確かに、同じ敷地内を何度か場所を変えて掘っくり返したり、一度にやればいいものを何度かに分けて掘削したりしている。だから、工事音のみを問題にして、「うるさい!」と自治体に文句の電話を入れたくなるのだろうが、時間があれば少しは「工事」の様子を観察してみるといい。
 なにかを「整備」するにしては、やたら掘削作業のみが多くはないだろうか? パワーショベルとブルドーザーで一気に掘ればいいものを、表層の土砂を少しずつすくいとり、確認しながらゆっくりと作業を進めてはいないだろうか。特に「工事の音がうるさい!」と役所に電話したり怒鳴りこんだりする方は、戦後になって東京にやってきた方たちではないだろうか? もし、そうであるならば、彼らは自分の住んでいる街の歴史を、あまりに知らなさすぎるといわれても仕方がないだろう。
 もちろん、そのような「工事」には、当該地が「埋蔵文化財包蔵地」に指定されていて、慎重に進める遺跡の発掘ケースも多いだろうが、そのような様子が見えずに建物や施設が建設されるわけでもない公園や公有地、あるいは空き地に見える原っぱの「整備工事」は、たいてい空襲で亡くなった人々の遺体を捜索して掘りおこしているのだ。
 空襲の直後、とりあえず仮埋葬で埋めたはずの遺体だが、その後、戦後の混乱から掘り返されて本埋葬されることなく、そのままになっているケースが多い。しかも、一夜にして10万人をゆうに超える死者・行方不明者をだしたとみられる東京大空襲Click!では、遺体を仮埋葬した土地でさえ、戦後になってわからなくなっているところも少なくない。特に、戦前から公園だったり、戦後になって公園化された敷地、寺社の所有地、戦後ずっと空き地のままになっている公有地、あるいはもともと河川敷だった土手や住宅地などには、伝承をたどっていくと戦災犠牲者の仮埋葬にたどりついたりする。
 戦後も76年以上が経過し、「空襲による犠牲者の遺体捜索」では予算がつきにくいのだろうか、公園や公有地などの「整備」予算の中から少しずつ捻出しては、「工事」を実施しているのだろう。戦争からあまりに時間がたちすぎて、一度に大きな予算がつきにくくなっているせいもあり、いっぺんにまとめて「工事」を実施するわけにはいかず、前期と後期の年度予算に分けて、少しずつ遺体捜索をつづけているケースもあるのかもしれない。特に、空襲被害が大きく行方不明者の実態が(何千人・何万人の単位なのかさえ)つかめていない、(城)下町の犠牲者探しは現在でも延々とつづけられている。
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戸山ヶ原標本遺体発掘調査現場.JPG
 だから、「うるさい!」とクレームを入れる前に、もう一度、「工事」の理由や現場の様子を仔細に観察するなり、問い合わせをするなりして注意をはらってほしい。役所の担当者は76年間も、代々にわたって忘れず几帳面かつ地道にコツコツと遺体捜索をつづけてきているのであり、少ない予算をなんとか捻出し、好きこのんで繰り返し「工事」を行なっているのではないことを、この街に住むのであれば理解してほしい。遺骨の収集をしているのは、なにも沖縄や南洋の島々だけではないことを認識してほしいのだ。
 前世紀末に、戸山ヶ原Click!に建っていた陸軍軍医学校の陸軍軍陣衛生学教室/化学兵器研究室Click!の前庭で、敗戦と同時に穴を掘って埋められた標本遺体が近年発見されたが、その後、当時勤務していた人たちの証言から、戸山公園Click!内の何ヶ所かを掘り返して調査がなされている。出土した遺体の骨などが、日本人のものではなく、他のアジア系の人々の遺体であり、頭蓋骨に穴(弾痕)の開いたものや、明らかに人為的に実験的な手が加えられた形跡があったため、より綿密な調査が重ねて行われている。
 この建物のすぐ西側には、陸軍防疫研究室Click!すなわち防疫給水部(731部隊)の拠点が建っていたので、地域の住民や自治体が敏感に反応したのだ。敗戦とともに、戸山ヶ原Click!の何ヶ所かに大きな穴を掘って埋められたという、アジア系の諸民族の特徴を備えた標本遺体は、人体実験に使われた被害者(=マルタ)ではないかと推測されたからだ。このケースでも自明なように、いまだ見つかっていない戦争の被害者は、都内あちこちの地面のすぐ下(特に東京大空襲では城下町の被爆地)に眠っている可能性が高い。
 戸山ヶ原Click!は広いので、ショベルカーやトラックが出入りしても「工事の音がうるさい!」と怒鳴りこむ住民はいないだろうが、戦前の市街地だと家々が密集しているせいか、事情を知らないで住んでいる人には、単に耳障りな工事音にすぎないのだろう。そう怒鳴りこむ方の家の下にだって、たくさんの遺体が仮埋葬のまま埋められているかもしれないのだ。戦争のツケを、延々と払いつづけなければならない事業に対し、「うるさい!」とクレームを入れるのは、面上にツバするがごとき行為にちがいない。
 話はガラリと変わるが、このところ下落合(中落合/中井地域含む)のあちこちでマンションや介護老人施設などの大規模な建設工事が行われているが、目白崖線のエリア全域がほぼ「埋蔵文化財包蔵地」のような土地がらであるにもかかわらず、発掘調査が行われたという事実をほとんど聞かない。工事を請け負っている建設業者が、なにかを発見しても下落合横穴古墳群Click!のケースのように当局へ通報せず、おそらく「見なかったこと」にして、そのまま破壊しているケースも多々あるのだろう。
 あるいは、それと気づかず単なる石として処分された石器類や、以前に建っていた家々の残滓だろうということで旧石器時代や縄文期、弥生期、古墳期の土器類や埴輪片が棄てられているケースもあるのかもしれない。それらの中には、日本史はおろか世界史レベルのコペルニクス的な転回点Click!をもたらすような、重大な発見が眠っているのかもしれず、自国の歴史に無頓着なゼネコンが無造作に破壊するのは、実に残念でもったいない光景に見える。
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 戦前、東京の外周域だったところでは、山手大空襲Click!で死亡した人たちの仮埋葬地Click!は、たいがいハッキリと人々の記憶Click!に残されており、戦後に改めて掘り返され本埋葬が行われている。だが、旧・城下町の一帯ではあまりに被害範囲が広く、かつ山手大空襲とは比較にならないほどの膨大な犠牲者のため、身元確認もせずにまとめて仮埋葬されたままになっている場所も少なくない。それが、長い時間経過とともに埋葬地さえわからなくなり、戦後は風景も一変してしまったため証言も曖昧化している。そんな街中に響く「整備工事」の音に、この街の歴史のささやきに、もう少し耳を傾けてみてはくれないだろうか?

◆写真上:変異種によるピーク時に、リモート授業へ転換できない小学校がかなりあった。
◆写真中上は、タブレットで勉強する小学生。新型コロナ禍のリスクから、GIGAスクール構想を前倒しにした自治体も多い。は、独特な教育風土で知られた小日向の黒田小学校Click!は、神田上水の開渠遺跡Click!を発掘中の同校跡。
◆写真中下は、公園における埋蔵文化財(江戸期の屋敷遺跡)の発掘調査。は、戸山ヶ原(現・戸山公園)の現状。は、標本遺体の発掘調査が行われた戸山ヶ原の区画。
◆写真下は、台東区三筋1丁目に残る東京大空襲時の電柱(レプリカ)で、実物は江戸東京博物館で保存されている。は、墨田区の横網町公園内にある関東大震災Click!東京大空襲Click!による犠牲者の慰霊塔。毎年、新たに発見される空襲犠牲者の身元不明遺骨も納められている。は、東京都の戦災殉難者名簿の一部。同名簿には判明している犠牲者のみが記録されているが、街の1区画の住民全員が丸ごと焼死したり、ひとりの係累も残らなかった一家全滅のケースも多いため、あとどれぐらい行方不明者がいるのかわからない。

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