数年前から、近所でもかなりのうわさになっていた下落合のタヌキたちだが、ついに写真に収められた。タヌキ目撃情報は、ずいぶん以前から下落合のそこここで聞かれていたが、夜間に活動するせいだろう、いままで写真に撮られることはなかった。わたしもカメラを手放さずにいたのだが、これまでついぞ出遭うことはなかった
 このタヌキたちは、西は野鳥の森公園から薬王院の森あたり、東は山手線のガード脇にあるコンビニあたりにかけて、頻繁に目撃されていた。しかも1匹や2匹ではなさそうだ。わたしが最初に耳にしたのは、野鳥の森公園の上にあった社宅の住民からだ。子ダヌキを数匹連れた母ダヌキが、ベランダをトイレ代わりに使うらしく、「もう、臭くて臭くて・・・」というものだった。最初は信じられなかったが、すぐにコンビニでの目撃情報がつづいた。これには、うちのオスガキ(上)もからんでいる。コンビニでは毎日、売れ残った弁当を店の裏手に置いて廃棄処分に備えるが、それをめあてにわざわざ十三間通りの下のゴミ処理場が設置した排水溝をくぐって“出張”してくるらしいのだ。御留山公園の近くでも、タヌキは何度か目撃されていた。
 写真にはタヌキが2匹写っているが、ちゃっかりエサをもらっている姿もとらえられている。そう、タヌキは雑食性で、里に近いエリアで棲息するせいか人間にとてもなつきやすい。人間の食べるものなら、たいていはタヌキも食べるのだ。わたしが子供のころ、北鎌倉の人家近くに一家で出没するタヌキたちは、よくインスタントラーメンを作ってもらっては美味しそうに食べていた。その後、鎌倉の山にタヌキは増えたが、いまではペットとして飼われていたのが棄てられたアライグマと、棲息地域が拮抗していると聞く。
(庭先でエサを食べる下落合ダヌキ)

 新宿はいまや東京の都心であり、間違っても「里」とは呼べないが、下落合には濃い緑のベルト、そのままの武蔵野原生林がいまだ破壊されずに残っている。そんなグリーンベルトを棲家にして往来しながら、どっこいタヌキたちは繁殖していた。七曲坂上の鼠山(いまや、「狸山」と呼んだほうがふさわしいかもしれない)から、御留山にかけてのかけがえのない緑地帯を守るために、いま「下落合みどりトラスト基金」がスタートしようとしている。
 数週間前から、日本テレビの取材チームが下落合に入っていたのは、「杏奴」のママさんからうかがって知っていたが、この週末も野鳥の森公園の上で撮影していた。うまくタヌキの姿を、映像に記録できただろうか? いまのところ、2月中旬に放送予定だそうだ。タヌキが通う緑の道Click!を、なんとしても下落合からこれ以上減らしたくない。

■写真:「下落合みどりトラスト基金」のパンフレット(2005年1月現在)より。