ユリカモメ、別名ミヤコドリは東京都の“都鳥”として知られるが、思わぬところで大群を見かけることがある。中央区、江東区、墨田区、台東区、港区、品川区、大田区あたりでは別に珍しくないだろうが、川づたいに新宿区や文京区にまでさかのぼってやってくる。ユリカモメの大群がわたる川とは、もちろん神田川。
 柳橋から神田、お茶ノ水、水道橋、そして旧江戸川の舩河原橋から大曲、江戸川橋、大滝橋、堰(関)口、早稲田ときて、面影橋まで姿を見せる。あと一歩で下落合というところに、真っ白いユリカモメの大群がいる。季節にもよるけれど、面影橋の周辺にとまるユリカモメは50羽以上はいるだろうか。ちょうどそのタイミングに行きあわせたりすると、風景が一瞬のうちに白っぽく変わり壮観な眺めとなる。都電に驚いて飛び立つ姿は、昔のどこか下町あたりの風景に似ていて面白い。
 冬になると、鴨たちとともに北の国から群れが飛来し、おもに大川(隅田川)や東京湾など水辺を中心に滞在するようだ。神田川で、その純白な姿を頻繁に見かけるようになったとき、「川がきれいになって、小魚が増えたせいだな」・・・などと勝手に考えていたのだが、これが大きな間違いだった。食性は、もちろん小魚も食べるのだが、カラスと同じでなんでも食べる雑食性らしい。鳥の印象を、白と黒の体色で勝手に判断しちゃいけないね。人間が食べるもの、すなわちユリカモメのエサとなるもの・・・ということらしく、数にまかせてカラスを追い散らし、代わりにゴミを漁ったりもしているようだ。

 鴨や白鷺は下落合に姿を見せるが、ユリカモメの群れはまだ見たことがない。ひょっとすると、下落合から小滝橋あたりの神田上水はパスして、とうの昔に水源地の井の頭公園まで出張しているかもしれない。なにしろ、最近は富士山のふもとにまで姿を現すカモメのようだから・・・。

■写真:上は、蔵前の電気・水道橋で、ひなたぼっこをするユリカモメの群れ。下は、旧安川庭園。