最近、いろいろなことが周囲で起こりすぎ、すっかり掲載がのびのびになってしまった。なにを酔狂な・・・と思われるかもしれないが、真冬の正月に王子を歩いてみた。王子というと、江戸桜ソメイヨシノのイメージが強く、なんとなくポカポカした雰囲気が漂うので、まだ桜にはほど遠い季節だったけれど出かけてみたのだ。結果・・・、やっぱりやめとけばよかった。
 雑司ヶ谷から都電に揺られて、ゴトゴトと20分ほどで王子駅に到着。さっそく飛鳥山から散歩したのだが、とにかく寒い。さすが北区とはよく言ったもので、葉のない木々の飛鳥山は北風がビュービューと吹き抜けていた。あまりに寒いので、早々に音無川から王子稲荷へ。ガタガタ震えながら、途中で蕎麦屋に避寒する。この蕎麦屋は意外や意外、とってもうまかった。
 王子稲荷へ着いたはいいけれど、やっぱり誰もいない。考えてみれば、王子の名所はすべて北向きの斜面に連続している。王子稲荷もそうだし、名主ノ滝公園もしかり。だから冬は陽が差さず、すべて日陰になってしまうのだ。閑散とした王子稲荷を散策しつつ、凍えて階段をうまく下りられない。社務所にも寄ったが、ここも誰もいない。みんなどこか、温かいところで丸くなっているのだろう。
  

 大晦日、関八州のキツネたちが、この稲荷近くの榎へ参集して階級を決め、命婦(みょうぶ/女官)の装束に着がえて稲荷へ参拝していた・・・というが、あれは絶対にウソだ。真冬に王子稲荷を訪れて、初めて実感できた。ホンドギツネだって、こんな寒いところへはやって来やしない。集っていたのは、津軽海峡を泳いできたキタキツネじゃなかろうか?
 そんな王子稲荷をあとにして、もうひとつの名所・名主ノ滝へと進む。でも、公園へ入る前から、山全体が黒々と日陰になっているのでメゲてしまった。それでも、気を取りなおして名主ノ滝見たさに公園内へ。でも、小径をどこまで歩いても、滝の音は聞こえてこない。いやな予感がしつつ、名主ノ滝じゃなくて、音無ノ滝の間違いじゃないのかな・・・なんて冗談半分に考えていたら、音がしないわけだ、滝が「工事中」で水を落としていない。どうせこんな真冬に出かけてくる、スットン狂なやつはいないだろうとタカをくくって、工事に取りかかってしまったわけだ。

 あ~、ひどい目にあった。こんなことなら、本でも読みながら1日ゴロゴロしていたほうがマシだった。真冬に行ってはいけないところ、富士のお山に飛鳥山。お粗末。

■写真上:北風で目がさめる吹きっつぁらしの飛鳥山。
■写真中:左は誰もいない王子稲荷、右は名所江戸百景118景「王子装束ゑの木大晦日の狐火」。
■写真下:いつまで待っても水の落ちてこない名主ノ滝。