昨年のちょうど今ごろ、店じまいをして下落合からいなくなってしまった、アメリカンパイの専門店「ローリングピン」さんの記事Click!を書いた。曾宮一念Click!佐伯祐三Click!が描く、「下落合風景」の描画ポイントに限りなく近い、諏訪谷の谷戸上にあったお店だ。軽井沢へ移ってしまい、向こうで改めて開店されるとのお話だった。ル・ヴァン美術館内のお店もどうなったのか、あれから少なからず気になっていたし、Webサイトも更新されておらず新規のサイトも、いまだ開設されていない。あれから1年、ついに、うれしい便りがやってきた。
 「ローリングピン プレオープン in 軽井沢」とタイトルして、新しい店舗で営業がスタートするようだ。新しい店舗の写真が載せられているけれど、まるで昔日の目白文化村Click!の邸宅のよう。当初、予定されていた店舗位置とは多少異なり、少し西よりの中軽井沢駅により近いところで、交通の便は案外よさそうだ。クルマがなくても、駅から散歩がてら歩いて20~30分もあればたどり着けるだろう。グランドオープンは、3月18日(日)からとのこと。その前のプレオープンは、ボサノバデュオの「サパトス」Click!による生演奏つきのパーティがあるとか。3月の軽井沢でボサノバというのも、なんとなくオツでいいかもしれない。
 ちなみに、「ローリングピン」さんの新しい店舗は、以下のとおり。ル・ヴァン美術館もほど近い。
  〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉798 Rolling Pin
 
 ボサノバといえば、最近はインディーズのボサノバレコード、いやCDにすっかりはまってしまっている。CHALAZA RECORDSClick!から出ている、有田勝造の一連の作品。仕事をしながら、1日じゅうリピートにして聴いてたりするから、音楽好きなわたしとしても異常だ。ジョビンのCDだって、数回繰り返して聴けばイヤになって、別のアルバムをかけたくなるのだけれど、不思議なことに、これらの作品群は何度聴いても飽きがこない。なにかに集中し始めると、フッと音が聞こえなくなり、気をゆるめるとどこからか少しずつ聞こえてくる曲。BGMといってしまえばそれまでなのだけれど、ヘタな環境音楽よりも上質で甘くて、せつなくて、くどくないいところがいいのかもしれない。
 サティは、自身が作った曲のことを「家具音楽」と称していた。いろいろな解釈があるけれど、家の中にあって自然なもの、そこにあってあたりまえなもの・・・というところだろうか。その表現にならえば、有田勝造のボサノバ作品群は、さしづめ「IT環境音楽」だ。神経を尖らせてPCに向かっているとき、ディスプレイから目をそらすとどこからか聞こえてくる音楽。「ちょっとコーヒーで一服しようか」と、立ちどまるきっかけを与えてくれる。原稿書きに集中していても、なにか複雑な処理をしていても邪魔にならず、いつの間にか耳からいなくなってくれる。呼びもどしたわけでもないのに、仕事中のすき間からこっそりと忍びこんできて、「まあまあ、時間はたっぷりあるんだよ」などと囁きかけてくる。ひと昔前のわたしなら、「スカ音楽」のカテゴリーへ入れてしまっていたかもしれない。
  
 さて、ボサノバつながりで、まったく関係のない話題をふたつくっつけてしまい、ぜんぜんまとめようがないのだけれど、たまにはこのままにしてうっちゃっとこう。
 軽井沢の「ローリングピン」さんは、下落合まで宅配してくれるだろうか?(爆!) 有田勝造のボサノバ作品群は、三春堂さんの土曜喫茶にみえていたCHALAZA RECORDSの方にお話をうかがい、三春堂さんから購入したのだけれど、各地のお店や先のネット上でも販売しているようだ。

■写真上:軽井沢にオープンする、「ローリングピン」さんの新店舗。
■写真下:CHALAZA RECORDS(カラザ・レコーズ)の左から右へ、有田勝造『ウェイビクル』(CRCD12)、同 『フラワーズ』(CRCD14)、同 『シャイン』(CRCD16)。