このサイトでも頻繁に取り上げてきた、タヌキの森Click!の「重層長屋」(実質マンション)の建設に、ようやくストップがかかった。もう、建築基準法もなにもかも無視して、新宿区建築課が区長にさえ告知せずに出した「特例」認定をベースに(建築課は、区長が地元住民と会合する数時間前に「特例」認定を業者に出すという狡猾さで、区長も意図的にカヤの外へ置かれていた)、旧・前田子爵邸Click!の移築建築を解体し、森の樹木を伐りまくり、目白崖線に残る縄文遺跡の埋蔵文化財包蔵地を掘り返して強行してきた、メチャクチャなマンション計画Click!なのだ。
 おかしなことに、新宿区の公園課では公園化予算として5億4,000万円が計上され、この金額は「集合住宅」が建てられない特殊な旗竿地としての評価価格を前提にしている。つまり、公園課は現状の建築計画を認めていない。また、建築指導課は南側のバッケ(崖地)を「急傾斜地崩壊危険箇所」と指定し、大きな人的・物的被害が生じる危険性があると、つい先年“網がけ”を行なった。そして、新宿消防署は消防車両の出入りに問題があり緊急災害時の安全性が確保できないという、前代未聞の意見書を提出している。中山弘子新宿区長Click!も、議会で早々に「遺憾」として建設計画には一貫して“反対”Click!だった。・・・つまり、建設計画に賛成しているのは、新宿区のオバカな「特例」認定を出した建築課だけで、他の部署は下落合の住民たちを期せずして「応援」してくれるという、奇妙奇天烈なことがタヌキの森では起きていたのだ。
 
 新宿区の多くの部署が「反対」しているにもかかわらず、「新宿区」を訴えざるをえなかった周辺住民のみなさんの心境は複雑だ。できることなら、新宿区建築課をピンポイントで訴えたかっただろう。東京高裁で行なわれていた裁判の判決が、つい先ほど(2009年1月14日)の午後1時30分に出た。裁判所は住民側の訴えを全面的に認め、建設計画は明らかな建築基準法違反であり、出されていた建築確認はさっそく取り消された。
 さあ、少なくともコンプライアンス感覚のある業者(まがりなりにも上場企業らしい)であれば、建築中の建物をすべて解体・撤去して原状回復、つまり元の森へもどさなければならない。「説明会」で住民を何度も恫喝Click!した業者諸君、1日も早く森へもどしてよ。まさか、ぶざまな工事中の残骸をそのままにして、千葉へ逃げてかないよね? それとも、地元住民の言葉へ真摯に耳を傾け、ちゃんと法律にもとづいたマトモな計画に変更する意志はあるのだろうか?

 
 これで、タヌキの森が公園化される可能性は高まったことになる。業者は、この土地に現在の計画を縮小し、少なくとも合法的な建物を建設しようとすれば、おそらく大赤字でまったく採算がとれないだろう。現状のメチャクチャな違法建築だからこそ、利益が見こめる計画だったのだ。もし、タヌキの森が公園になれば、「野鳥の森公園」や薬王院の森と連続する、下落合のグリーンベルトはかろうじて確保されることになる。御留山Click!の「おとめ山公園」1.8倍拡張計画Click!とともに、下落合のみどりが大きく拡がる可能性があるのはうれしい限りだ。ついでに、中村彝アトリエClick!の保存も早く決着がついてくれると、うれしさ倍増なのだが・・・。

■写真上:業者が周辺住民を無視して、建設を強引に進めていた「重層長屋」(実質マンション)。
■写真中:左は、タヌキの森に建っていた旧・前田子爵邸の移築建築。戦前は、下落合を中心に数々の建築を手がけた服部土木事務所Click!だった。右は、おとめ山公園拡張計画の概要で、すでに新宿区は土地を取得しはじめている。(「根本二郎区政報告」パンフレット2009.No.1より)
■写真下:目白崖線沿いの下落合に残る、武蔵野のグリーンベルトとその住民。