うちの上のオスガキが大学に通っているのだが、最近の大学をめぐる様子や雰囲気を見ていると、思わず「はぁ~??」と思うことが少なくない。まず最初は、大学からとどいた「父兄様」と題する手紙からはじまった。さっそく連れ合いが、「うちにはボはいるけどケイはおりません。ケイってなんですかケイって?」と大学当局に抗議して、次の手紙から「父母様」宛てになった。
 いや、こういう形式的な非常識がテーマなのではない。問題は、その手紙の内容だ。それは、在学している学生たちのPTAならぬ「父母の会」への誘いだったのだ。「より大学とお子様のご家庭とのきずなを深くし、親密なコミュニケーションを図ることで・・・云々」的な文章が並んでいる。思わず、目が点になりのけぞってしまった。(・・; 18歳から22歳まで、いい歳をしたもういっちょまえの大学生の世界へ、なんで親がしゃしゃり出て行く必要があるんだ? 「父母の会」は月ごとに定期的に開かれ、まるで小中学校のPTAとそっくりなしくみになっている。ついでに、父母への大学生活に関する「オリエンテーション」や「講座」までが開催され、授業参観ならぬ講義参観やキャンパス見学までが「父母の会」行事として予定されている。
 これ、不可解でおかしなことだとは、誰も感じない世の中なのだろうか? もはや20歳前後にもなった大人の学生生活に、なんで親がチョロチョロと密接に関係しなければならないんだろう。
 
 わたしは、親が大学の入学式や卒業式に顔を出すことさえ、不思議な光景だと感じている。もっとも、大学の存在する地域が地元ではなく、遠いよその地域から「子どもは、どんな街で生活してるんだろう?」とか、「子どもが通う大学はどんな環境なのだろ?」と不安を抱いて、入学式などをきっかけに故郷から様子を見にくる親の心情は理解できる。でも、地元大学の入学式なのに親が出てくるのは、わたしの世代では情けないことこの上なく、友人たちには親から精神的に自立(自律)できていない象徴のように見られてもしょうがない、いわば最悪の事態だったのだ。
 大学からの、不可解なお手紙はつづく。隔月でとどく、「父母の会」発行の「キャンパスライフ」小冊子(オレは学生じゃなく親だぜ!)は読まずに棄てていたが、そのうち「重要」と捺印された封書がとどいた。後期の学費納入用の振込票でも入っているのかと開けてみたら、「単位取得状況」という書類が出てくる。オスガキにとどいた手紙を、わたしは間違って開封してしまったのかと、あわてて宛て名書きを確認すると、やっぱりわたし宛てになっている。添付されたお手紙を読んでみると、「お子様の単位取得状況を把握されることで、お子様の大学生活へよりよいアドバイスをしていただければ・・・云々」。バッカじゃなかろうか!・・・と、開いた口がふさがらない。なんで、大学生にもなったオスガキの単位取得の状況を、親が知って「管理」しなければならないんだい?
 
 案のじょう、それから1週間ほどして、親宛てに「成績表」が送られてきた。「お子様の前期成績は、一般教養ではAが○、Bが○・・・D(不可)が2つとなっております。Dは講義への出席日数が不足しているか、あるいは前期試験の成績が悪いか、または試験を受けていない可能性があり・・・云々」と、こと細かに履修の様子がレポートされていた。ついでに、「卒業までに要する単位取得と現在の取得状況」というドキュメントも添付されていて、「注意が必要」レベルにマーキングされている。実に情けないことこの上ない、いやオスガキがではなく、大学が・・・だ。こんなことは親の知ったことじゃなく、大学生にもなった子どもが自分で悩み心配して、なんとか解決しなければならない、ほんの初歩的な課題のひとつだ。それを親に「言いつけ」て、いったいどうしろというんだろう? 社会へ向けて自立(自律)をめざす、いい歳をした学生諸君の、これではまったく立つ瀬がないじゃないか。
 そういえば、わたしの母校からも最近、やたらに手紙がとどくようになった。どうせ同窓会かOB会のお誘いだろうと思って開封すると、赤い振込用紙がパラリと出てきて「ご寄付のお願い」ときたもんだ。数ヶ月おきにとどくから、開けてみるといつも振込用紙がパラリと出てくる。どうやら、大学図書館や各種資料館などを利用するために、学生証と同様の機能があり、ついでに無料のメルアドも取得できる大学カードを作ったのが間違いのもとだったようだ。卒業したあと、数ヶ月おきに「金よこせ~」と言ってくるほど、うちの大学はひもじくて貧乏だったのだろうか? なんだか、情けないを通りこして悲しい気持ちにさえなってくる。
 
 以来、オスガキの大学から送られてくる、「父母の会」の冊子が入った角2封筒と、母校からモノ欲しそうに送られてくる「金よこせ~」のお手紙は、読まずに棄てることにしている。「重要」と捺印されている封書は、読まずにオスガキへ渡すようになった。

■写真:下落合とその周辺にある大学。上から立教大学Click!、中上は学習院大学Click!(左)、目白大学(右)、中下は東京富士大学Click!(左)、学習院女子大学Click!(右)、下は日本女子大学Click!(左)、早稲田大学Click!(右)。これら大学の関係者が、昔から下落合界隈には多く住んでいる。