前回Click!につづき、7月31日(曇)に測定した下落合と上落合の東部の放射線量を記録しておく。
 諏訪谷Click!の谷戸の突き当たりにある大六天Click!は、せまい参道筋の土面を測定してみた。結果は地面が0.26~0.28μSv/h(マイクロシーベルト/時)と、今回計測した地点の中ではもっとも高い数値を示した。地上1mの空気中では、0.15~0.17μSv/hとやや高めだ。
 佐伯祐三Click!の連作『下落合風景』Click!のひとつ、「セメントの坪(ヘイ)」Click!前の道を通り、佐伯アトリエへと向かう。佐伯アトリエでは、南側のベンチ脇の地面(砂利が敷かれている)を測ってみると、0.24~0.26μSv/hとやや高めだ。空中は、大六天と同様に0.15~0.17μSv/hの数値が出た。次に、八島さんの前通りClick!を横断して第三文化村Click!の北端、みつば児童遊園へと向かった。子ども用の砂場もある、かわいい公園だ。公園の中央西寄りの地面は、0.11~0.13μSv/hとかなり低い数値だが、空中は逆に樹木や公園遊具のせいなのか0.16~0.18μSv/hと佐伯アトリエよりも高めの数値となった。砂場は、地面および空中ともに0.16~0.18μSv/hという数値が出た。北向きの公園なので、南風が吹きこみにくく滞留しやすい影響もあるのかもしれない。
 つづいて、第三文化村の不動谷Click!(西ノ谷Click!)に位置し、聖母病院Click!西側の谷間に造られたネームプレートのない公園へと向かう。公園西側に設置されたベンチ脇の地面は、0.15~0.17μSv/hと高くも低くもない数値で、空中は0.11~0.13と低かった。次に、八島さんの前通りを南へ下り、道路に面したカバ公園(中落合児童遊園)を測定してみる。公園中央の白カバくんの脇で測ると、地面は0.09~0.11μSv/hとかなり低い数値で、空中も0.11~0.13と低めの結果だった。ほぼ室内と同じような数値で、下落合東公園と同レベルの低さだ。また、同公園の砂場も地表が0.10~0.11μSv/h、空中も0.10~0.12μSv/hとこちらもかなり低い。おそらく、ご近所の方々が毎日ていねいに掃除をし、手入れをされているのだろう。
 次に向かったのは、大正期には徳川邸Click!の旧・静観園Click!(東側へ移動する前の元位置)があった西坂公園だ。公園南側のベンチ脇で測定してみると、地面が0.17~0.19μSv/hで、空中が0.11~0.13μSv/hという結果だった。これまで各地点で出た計測結果と比較すると、地面はやや高めで空中は低めといったところだ。次に、少し西へと歩き、落合第一小学校Click!の通学路に面した校門近くの植込み花壇を測定してみる。土面は0.19~0.21μSv/hで高め、空中は0.10~0.12と逆に低めの数値だった。でも、土面を計測している途中で、今回測定してまわった地点ではもっとも高い測定値である0.33μSv/hの値が、数秒にわたって出たことは付記しておきたい。
 
 
 次に、秋艸堂Click!があった斜面の霞坂Click!を一気に下って十三間通り(新目白通り)をわたり、蛇行していた旧・妙正寺川の流れ跡にできた中落合公園へと出る。同公園では、中央やや東側にあるベンチの脇を測定してみた。地面は0.16~0.18μSv/hと相対的にやや高めだが、空中は0.10~0.12μSv/hと低い値を示した。つづいて、中ノ道Click!(中井通りClick!)を西へしばらく歩き、妙正寺川をわたって寺斉橋Click!もほど近い上落合公園を測定してみる。公園の北東側にあるベンチ脇では、地面と空中がともに0.12~0.14μSv/hと同値を記録した。他の測定ポイントと比べれば、相対的には低い放射線量ということになる。
 上落合公園から東へ向かい、月見岡八幡社の境内を測りたかったのだが門が閉まっていて入れず、さらに南にある旧・八幡社跡地の八幡公園Click!を測ることにする。簾棚下のベンチ脇を測定したのだが、この地点はレンガが一面に敷かれていて、土面に比べ雨水が一度染みこむと水はけが悪いと思われる地表だ。地面(レンガ表面)は0.20~0.22μSv/hとやや高く、また空中も0.16~0.18μSv/hと他の地点に比べて相対的に高めだった。もっとも、この計測した放射線は福島第一原発のものではなく、最近、官公庁あるいは公共施設で流通・使用されている「人形峠製」のレンガだったりすると、もう二重の被曝環境になってしまいそうだ。
 最後にまわったのが下落合駅Click!のすぐ南側に位置する、せせらぎの里公園だ。ここは広いスペースなので、2ヶ所を測定することにしたのだが、うちの子どもたちもよく遊んだ芝生を敷きつめた広い草原が気になっていた。芝生上の地表は0.22~0.24μSv/hとやはり高く、地上1mの空中でも0.18~0.20μSv/hと高めだ。運動器具が置かれた、公園南側の藤棚近くを測ってみると、地面が0.17~0.19μSv/hで空中が0.15~0.17μSv/hと、芝生のあるエリアに比べて低くなっている。予想どおり、地表に苔や短めの草が生えているところが、放射性物質を溜めこみやすいのだろう。
 
 
 
 チェルノブイリ原発事故のときがそうであったように、放射性物質の濃縮現象がはじまるのはこれからが“本番”だ。食品などに含まれる現在の放射線量は、むしろ将来の予想値に比べれば低い数値を示しているのだろう。チェルノブイリのケースでみると、事故から3~5年目あたりが植物や動物などに含まれる放射線量がもっとも高かったように記憶している。そして、比例するようにベラルーシClick!やウクライナの子どもたちの発癌率が、急激に高くなっていったのだ。当時のソ連政府は、国内の正確な数値を発表しなかったので不明だが、ヨーロッパじゅうの食品から高濃度のセシウムが検出されている。当時、輸入が禁止された食品には、フランス産をはじめとする各種ワインや、イタリアのパスタ類、北欧産の魚介類缶詰などがあった。九州で生産された“どんこ椎茸”から、非常に高い数値が出たのもこのころだ。子どもが生まれたばかりだった当時、口に入る食品にはかなり敏感になって注意していたのを憶えている。しかし、今回の福島における原発事故は、1980年代末に注意を向けていたそれらの数値などお話にならず、ケタ違いに高いのはいうまでもない。
 チェルノブイリが「レベル7」だとすれば、今後の食品汚染を考えるなら福島はレベル7×原子炉3基分で「レベル21」だとする、ある方の言は“しかり”だと思う。今年の3月21日から22日にかけ、関東地方には過去50年間にわたって降り注いだ放射線量に匹敵するフォールアウトがあったとされる。その50年間には、もちろん大気圏内の核実験(おもに中国)やチェルノブイリの事故も含まれているのだが、その量がたった2日間で関東から中部にかけて降り注いでしまったのだ。
 チェルノブイリから翌1987年にかけ、東京では1981~1982年(スリーマイル島原発事故のあと、日本でも原発発電比率を3割に上げると発表した時期にあたる)に次いで、反核・反原発の活動が大規模化していった。北海道の泊原発建設計画が、ちょうど具体化していた時期にもあたる。十数万の反対署名を、通産省などに提出する東京での動きを背景に、TVのNHKニュース(報道特集だったか?)でインタビューに答えていた当の原発立地の人々の言葉が、いまだ耳について離れない。東京におけるこのような反対の動きについて、原発のある自治体の首長や住民たちが口をそろえるように、「迷惑千万だ」といったのだ。当時、東電の福島第二原発の4号炉が稼働直前だったと記憶しているので、福島県内でのインタビューだったかもしれない。
 

 以前、松尾徳三様から写真をいただいた、おとめ山公園に生える多彩なキノコ類Click!にも、これから数年にわたり濃縮現象が進んでいくのだろう。今回は、実際の測定作業とそのまとめとで丸1日かかってしまい、酸性土壌を調べたときよりも歩いた距離が短いにもかかわらず、グッタリ疲れてしまった。もし、時間的な余裕があれば旧・下落合および上落合の西部についても測定してみたいのだが、すでにどなたかが調べておられるのなら、そちらのデータを参照していただきたい。

◆写真上:下落合の室内(1階)は、ほぼ毎日0.08μSv/hぐらいだ。
◆写真中上:測定場所別の、それぞれ具体的な計測ポイント。
◆写真中下:同じく、測定地点別の計測ポイント。
◆写真下:左上は、せせらぎの里公園の測定ポイント。上右は、同公園の芝生上での計測。下は、測定地別の結果一覧で単位はμSv/h(マイクロシーベルト/時)。