絵本を書いた。うちのオスガキどもが小さかったころ、絵本まがいのものは、いくつかこしらえてやったけれど、ちゃんと値段がついて販売していただける絵本は初めてだ。ほんとうは、物語が書きたいのだけれど・・・。
 この絵本、3~6歳ぐらいの子供が対象だから、物語性の強いプロットでストーリーは書けなかったが、やさしげなイラストとともに色鮮やかな面白い絵本になった。イラストレーターのやさしい某さんのおかげだ。このぐらいの年齢の子は、まず筋の通ったお話の展開よりも、絵本の中の「色」や「かたち」に興味を抱くものらしい。だから、できるだけ母親が説明しやすい代表的な色を選んで、それぞれ登場するものたちを描いてもらった。

 さて、かんじんのストーリーなのだが、ある女の子が公園へ遊びに行くと、緑に囲まれた“屋敷森”跡のようなところで、さまざまな出会いをすることになる。それが、バッケに湧く「泉のおばさん」だったり、武蔵野原生の「どんぐりのお兄さん」だったり、弁天池出身らしい「蛙のおじさん」だったり、あげくの果ては「たぬき時計」までが登場するという始末だ。

 そう、この絵本を書いたのが、ちょうど「下落合みどりトラスト基金」が保存をめざしている屋敷森に建っていた、旧・前田子爵邸の解体が終わったころのこと。アタマの中が、すみからすみまでほとんど「下落合みどり」色だったせいで、期せずしてこんなストーリーになってしまった。旧・遠藤邸の屋敷森界隈か、御留山あるいは野鳥の森公園の風情そのままじゃないか。それでも、出版をOKしてくださった、度量の広いクライアントに感謝!

 「下落合みどり」色が、これからいつまでも残りますように・・・。

■イラスト:上から「タヌキどけい」、「いずみのおばさん」、「どんぐりのおにいさん」、「かえるのおじさん」。「タヌキどけい」はお昼になると、なぜかシッポがブ~ラブ~ラゆれるのだ。かわいい仔ネコの「ポラリス」も登場する。