先日、タヌキが庭へ通ってくるK邸にお邪魔をして、お話をうかがった。しばらく、下落合ダヌキの目撃情報が途絶えていたのだが、K邸の庭には相変わらず4匹のタヌキが顔を見せている。ただし、昨年の冬以来、毎日のように訪れていたタヌキの一家は、昨年12月と今年の1月は、まだ8回ぐらいしか姿を見せていないそうだ。エサの乏しい冬場に、食べ物をくれるお宅が近所で増えたのだろうか?
 昨年の春に生まれた子ダヌキは順調に成長して、いまや親ダヌキと同じぐらいの大きさになっているとか。最近、旧・林泉園近くの路上Click!や、旧・中村彝アトリエの北側にある下落合東公園で目撃されている2匹のタヌキは、このつがいの親ダヌキあるいは子ダヌキだろうか? それとも、まったく異なる個体なのだろうか? 数家族のタヌキが棲みつく屋敷森周辺から、中村彝アトリエや下落合東公園は少し距離があるので、別家族の可能性が高いように思う。
 
 最近、東京じゅうでタヌキの目撃情報が寄せられている。ある地域のタヌキは、ダニを媒介とする疥癬症に集団で感染してしまい、みるみる衰弱していったそうだ。見るに見かねた住民たちが捕獲し、獣医で治療を受けさせているという。寒い冬場は、一家で身体を寄せ合って眠ることも多いだろうから、感染病の拡がりも速いらしい。なるほど、タヌキもイヌ科の動物だから、かかる病気も似ているのだろう。野性のタヌキはめったにかからないといわれる疥癬症だが、人間に近づくことで罹患しやすくなっているという話も聞く。
 下落合ダヌキの、格好の棲家となっている屋敷森界隈だが、ここへ来て集合住宅の建設を業者が強行しようとしている。新宿区は、業者が提出した「緑化計画書」をいともカンタンに通してしまい、屋敷森に残るほとんどすべての樹木伐採を承認した。(なにが「緑化」なのだ?) 1月24日(火)に予定されている「説明会」の翌日には、業者は早々に「建築確認」申請をしようとしている。今回の耐震データ偽造事件でも明らかなように、「建築確認」を承認するのは自治体ではなく民間の同業者、同じ穴のタヌキだ・・・いやムジナだ。まるで、お手盛りのマッチポンプではないか。

 業者は「確認申請」が下りしだい、いまや新宿区ではここだけ、都内でもたいへん貴重な住宅街に拡がる武蔵野原生森を、たちどころに伐採し始めるだろう。下落合の緑を少しでも守れるかどうか、いま最大の危機Click!を迎えている。

■写真上:タヌキの一家が通ってくる、K邸の庭先。花粉症の茶トラも共存している。
■写真中:左は、2005年5月に撮影されたタヌキの家族。子ダヌキは、いまや親ダヌキと同じ大きさに育った。右は、暗闇に光るタヌキの目。旧・中村彝アトリエ前の路上にて。
■写真下:K邸の縁側から眺めた屋敷森。樹齢200年をゆうに超える、巨大なクスノキが目を惹く。K邸は旧・前田子爵邸と同様、下落合最古の明治建築のひとつだ。