以前に紹介した新池袋モンパルナス西口まちかど「回遊美術館」Click!が、きょう最終日を迎える。豊島区や立教大学が中心となり、池袋西口を「芸術の街」として宣言。豊島区に拡がる旧・アトリエ村などの紹介とともに、町全体を美術館にしてしまおう・・・という企画だ。隣接する練馬区でも、練馬区立美術館を中心にさまざまな催しが開かれているので、新宿区に隣接する北側2区が本格的な町づくりを前提としたカルチャー事業に乗り出してくれたのがうれしい。さて、新宿区は・・・?
 その一環として、椎名町のみなさんが「池袋・椎名町・目白/アトリエ村散策マップ」を作ってくれた。椎名町は、こちらでも紹介した「さくらヶ丘パルテノン」Click!の本拠地であり、数多くの画家や作家、詩人たちが参集したのでも有名だ。このマップには、櫛稲田姫の長崎神社(旧・氷川明神)Click!をはじめ、埋め立てられた谷端川Click!、自由学園明日館、尾張徳川邸Click!目白庭園Click!上屋敷公園Click!などなど、豊島区側にあるポイントがわかりやすく紹介されている。
 
 こういう地図を作ると、たいがいは行政区画の中、つまり椎名町のある豊島区内の見所を紹介することが多いのだけれど、このマップでは新宿区側の下落合もちゃんと紹介されているところがとってもうれしい。しかも、マップには佐伯祐三アトリエClick!鶴田吾郎の旧居跡Click! そして中村彝アトリエClick!も記載されている。画家のリストでは、松本竣介Click!や安井曾太郎、曾宮一念Click!など、下落合にアトリエのあった画家たちまでがていねいに紹介されている。
 このような、ネット時代にふさわしいボーダーレスの発想は大好きだ。豊島区側の旧・高田町雑司ヶ谷旭出と、新宿区側の旧・落合町下落合は、ともに「目白」という山手線の駅名でくくれる地域だ。新宿区の中山弘子区長は、盛んにアライアンス(協業)という言葉をつかわれるが、豊島区とのアライアンスという手法はいかがだろうか? 林芙美子邸の東隣りにある、刑部人邸(アトリエ)Click!も保存できずマンションが建てられようとしているのを聞くにつけ、「新宿区はなにをしているのだろう?」という問いが、お隣りの豊島区民ならずともアタマをもたげてくる。

 新宿区民であるわたしは、「なぜ町にとってかけがえのない貴重なものを保存しないの?」という隣区の方からの問いに対して、「さあ?(--;)y-゜゜゜」としか答えようがないのが、とっても恥ずかしい。伐採が開始された、「下落合みどりトラスト基金」Click!の屋敷森の件も根は同様だ。新宿区に保存する力(それが貴重であることを認知する価値観)も、おカネもないのであれば、自治体協業ということで、いっそのことお隣りの豊島区の力を借りてはいかがだろうか? そして、「目白・下落合歴史散歩コース~ついでにタヌキにも会えるかも~」なんてのを作れば、イメージアップとともに人々が集まるばかりでなく、後世にわたってこの記念碑的な事業は継承されていくだろう。
 下落合側(旧・下落合地区は除く)で、いまやアトリエが現存するのは、佐伯祐三と中村彝のふたつのみだ。せっかく豊島区側のみなさんが、力を入れて紹介してくださっているのだから、佐伯祐三アトリエばかりでなく、このマップの中でも、いや東京の西北部の中でももっとも古いと思われる、1916年(大正5)建築の中村彝アトリエClick!も、ともに残しましょ、新宿区さん。

■写真上:中村彝アトリエの大正5年当時のドアノブ。保存への扉を開きましょう>新宿区さん。
■写真下:左は「池袋・椎名町・目白/アトリエ村散策マップ」、右は自由学園明日館。
■地図:下落合側も含まれた散策マップ。(部分)