いまから10年以上も前だろうか、オスガキを下落合みどり幼稚園へ送り迎えしていたとき、たまたま通りかかった文化村の外れで、道を横切るウサギを見た。いや、最初はネコだと思っていたのだが、ネコはうしろ足で跳ねながら歩いたりしない。よく見ると、やっぱりどこからどこまで白黒ウサギなのだ。目白文化村には野良ネコならぬ、“野良”ウサギもいるのか!・・・と呆然として見送った。
 目の錯覚でないことは、その後もしばしば見かけ、どうやらご近所の方が飼われていることがわかった。付近にお住まいの方の話によれば、いちばん多いときには10羽ほども飼われていて、昼間は庭で放し飼いをされているようなのだ。その中で、庭を抜け出した冒険好きなウサギたちが、文化村の中を自由にピョンピョン散歩するらしい。もともと、周囲はクルマが通れるような道ではないので、いくらウサギが道端で跳ねていてもそれほど危険はないのだが、道を歩いている人はあっけにとられて驚いてしまう。
 
 目白文化村の“野良”ウサギの話は、オスガキが幼稚園へ通わなくなってから、しばらく忘れていた。ところが先日、文化村を歩いていたら、またしても“野良”ウサギが跳び出してきたのだ。「あっ、まだいたんだ」と思ったが、10年以上も前のウサギとはもちろん違う、新世代の“野良”ウサギなのだろう。おかしいことに、ウサギのあとを野良ネコが動きに合わせて尾行しており、それを見ている近くの庭につながれたイヌが、吠えもせず盛んにシッポを振っている。野良ネコは、あとを尾けているだけで、自分とたいして大きさの違わないウサギを、特に襲う気配はないようだった。
 “野良”ウサギはといえば、野良ネコが2mあとから尾けているのを当然知っているのだろうが、ほとんど気にもとめず、勝手気ままに住宅の庭から庭へと歩きまわっている。近寄ると、さすがに図体の大きな人間は気になるらしく、こそこそと植木鉢のうしろへ隠れてしまった。カメラを向けても、逃げようとはせずにレンズをジッと見つめている。その顔は、「散歩の邪魔するな、早くどっかへ行ってくれピョン」と言っているようだ。
 
 下落合のおとめ山公園界隈には、「カルガモ横断注意」の道路標識があり、野鳥の森公園/薬王院のあたりには、また赤ちゃんも産まれたClick!ことだし、そろそろ「タヌキ横断注意」の標識ができてもよさそうな気もするけれど、目白文化村のある一画には、「ウサギ横断注意」なんて標識があってもいいかもしれない。
 あっ、うちの近くだと「アオダイショウ/シマヘビ横断注意」なんて標識もいりそうだ。いや、訪問客がガタ減りするといけないので、やっぱり止めとこ。(^^;

■写真上:目白文化村の“野良”ウサギ。人が苦手なのか、近づくと植木鉢の陰に隠れてしまった。近寄って顔をのぞくと、なんだかスターウォーズにでも出てきそうなキャラクターに見える。
■写真下:左は、おとめ山公園近くの「カルガモ横断注意」の標識。右は、“野良”ウサギが頻繁に目撃される近くの近代建築。なんとなく昔のお医者さんを感じさせる趣きで、消毒液の匂いがしそうだ。