わたしは、いつも10時前後に帰宅することが多いのだが、このところ街灯が少なく薄暗い路上で、毎晩のように出迎えてくれるのが、下落合に棲むタヌキくんClick!たちだ。たいがいこの時期は2匹で行動していて、歩くときの身体の動きがいかにもモコモコしているし、ネコよりもひとまわり大きいからすぐにわかる。そして、光を受けた目が異様に光るのもタヌキくんの特徴だ。
 すぐ近くに、下落合で、いや新宿区で唯一残ったと思われる畑地や、「オバケ坂(バッケ坂)」が通う野鳥の森、この夏に着工されてしまった旧・E邸敷地の“たぬきの森”Click!、さらに薬王院の森が拡がっているエリアなので、タヌキくんたちの棲息域としてはまだまだ快適なほうなのだろう。新宿駅のホーム下に棲むタヌキくんたちよりは、かなりめぐまれた環境にはちがいない。彼らのおめあては、近所のそこかしこで熟して落ちはじめた柿の実だ。
 タヌキくんたちは雑食性だから、人間の食べるものならたいがいなんでも食べる。賞味期限が切れた、廃棄用のお弁当をコンビニ裏の廃棄箱へ出しておくと、知らないうちに「いただきますポン」ときれいに平らげていく。野良ネコや野ネズミは、食べ物を選り好みして食い散らかしていくそうだが、野良タヌキ(家タヌキっていたかな?)はイヌのように、案外きれいに残さず食べるらしい。この伝でいくと、新宿駅のタヌキくんたちは住環境は最悪だけれど、きっとグルメで舌がおごっているにちがいない。「カリーは、中村屋以外のものは食えないポン」。
 
 樹木になる果実といっても、やはり下落合に多いイチョウの銀杏の実は、タヌキくんたち大ッキライなようだ。あの強烈な臭気が、さすが雑食性の彼らも苦手なのだろう。でも、自分たちのオシッコだって、ものすごい臭いがするのだけれど・・・。以前、マンションの階段状の屋根に落ちたタヌキくん救出作戦Click!のとき、オシッコをされて閉口した。人間相手に緊張して、ついお漏らしをしてしまったようだけれど、とんでもなく臭いのだ。一度鼻についたら、しばらくは鼻先から抜けないほどの臭い。この強烈なオシッコの臭いでマーキングして歩き、自分のテリトリーを主張しているのだろう。とてもそうは見えないのだけれど、タヌキはイヌ科の動物だ。
 先日、ご近所の方が「この前の夜、タヌキ見たよ。意外に小さかった」と言われた。詳しくお話をうかがうと、どうやらタヌキではなくハクビシンClick!を見間違えたらしい。ハクビシンも大きくなると、ネコぐらいの大きさにはなる。ハクビシンの尻尾は、ちょうどイラストやマンガに描かれるタヌキの太くて長いボヨヨンとした尻尾にそっくりだから、そのかたちを見てタヌキだと思われてしまったらしい。タヌキくんの尻尾は、ボヨンとしているけれど意外に短い。それに、タヌキくんの身体はどう見てもスマートとはいえず、ハクビシンのしなやかなスタイルとは大違いなのだ。
 
 野鳥の森や薬王院の森に限らず、御留山や学習院の森にも棲息しているらしいタヌキくんたちは、冬のきびしい食糧不足に備え、1年でもっとも食欲のある季節を迎えている。だから、柿の木のある庭でも廃棄にありつけるコンビニでも、どこへでもいとわず出張しているのだろう。
 さて、今夜も甘いデザートを食べたくて、近所をウロウロと歩きまわっているタヌキくん。そのうち、もう少し寒くなると街灯のない暗がりから、「ねえ兄さん、ちょいとコンビニのお弁当でも、ご一緒しませんこと?・・・ポン」などと、目がキラキラ光るきれいなお姉さんが現れたら、要注意なのだ。江戸の昔と同様に、嫌煙家のタヌキくんはタバコに火を点けたとたん、シッポを出して逃げていくにちがいない。

■写真上:うん? このキラキラ光る眼差しは・・・。
■写真中:今晩もまた、お出迎えというわけですか。
■写真下:左は、タヌキくんが食べた柿の実。ちゃんと渋皮をむいて、中身だけがきれいに食べられている。右は、タヌキくんの通い道、野鳥の森公園に隣接した「オバケ坂」。
■番外:きょうは寒いから、鍋でも食いたいな。・・・はぁ!?(((一一;