今年の6月に制作した『下落合風景画集』Click!につづき、その後新たに見つかった作品を加えた、佐伯祐三『下落合風景』の全画集・第2版ができあがってきた。旧版よりも4ページ増やし、全44ページ仕様となっている。新たに加えた作品としては、文化村「スキー場」の斜面を北側から尾根づたいに描いた「雪景」Click!をはじめ、「八島さんの前通り」タテの画Click!の別バージョン、「森たさんのトナリ」のカラー版Click!、「遠望の岡?」のより鮮やかで精細なカラー版Click!、相変わらず朝日晃によって所在が不明とされている「絵馬堂(堂)」のカラー版Click!などの画像だ。
 ページを増やすとともに、掲載作品の画像や描画ポイントの現状写真のサイズ、およびページレイアウトも全面的に変更している。個々の作品画像と描画ポイント写真を、できるだけ大きく拡大して掲載してみた。また、同一場所を何度かに分けて描いた作品、たとえば「曾宮さんの前」Click!や「洗濯物のある風景」Click!、「八島さんの前通り」Click!などは、可能なかぎり見開きで相互に比較し、観賞できるような工夫も試みている。描画ポイントの現状写真も、単にサイズを大きくするだけでなく、その後に撮影した新たな写真も加えている。さらに、新宿歴史博物館のご好意で、実際に作品を細かく観察・撮影させていただいた「テニス」Click!には、佐伯の細かなタッチがわかるよう部分拡大の画像も追加してみた。


 画集に収録した『下落合風景』Click!の総数は46点、下落合を外れ旧・目白駅前Click!近くの金久保沢あたりから下落合の丘を描いたとみられる「目白風景」Click!が1点、F.L.ライトの小路の先にあった山手線の踏み切りを描いた「踏切」Click!が1点、いまだどこを描いたのかわからない「絵馬堂(堂)」が1点の、合計49点の作品を掲載している。
 同時に、前回はページ数の制約で掲載できなかった、佐伯の「制作メモ」(1926年9月18日~10月23日)の写真Click!と、1936年(昭和11)に撮影された空中写真をもとに、下落合全域の描画ポイントを鳥瞰する画像図版も、最後の見開きページに加えてみた。ついでに、なにかひと言書いてみたかったけれど、またしてもページに余裕がなくなってしまった。


 いちおう、2007年末の現在で判明している『下落合風景』は、残らず網羅できていると思うけれど、「うちの絵が載っていない!」とか「こんなのもあるよ!」という方がいらっしゃれば、ぜひまたご連絡をいただきたいと思う。「絵馬堂(堂)」と同様に、新しいカラー画像があるのに、なぜか作品は行方不明・・・というシチュエーションで、きちんと対応させていただきます。(^^;
 いまのところ、金久保沢の「目白風景」まで含めると、『下落合風景』は全47点だけれど、画集の版下データを作り終え印刷・製本へ入稿し終えたところで、ハタと気がついてしまった。佐伯が下落合を描いたとみられるスケッチ類ないしは素描類が、まだいくらか残っていたはずなのだ。しかも、水彩でうっすらと着色している作品もあったはずだ。きっと、朝日新聞社の『全画集』には掲載されているだろう・・・と、これでまたページ数を追加したバージョンアップが必須となってしまった。


 中扉には、初版の野外でスケッチをする佐伯祐三Click!ではなく、紀伊国屋書店のギャラリーで開催された自身の個展(1927年4月)において、架けられた『下落合風景』や静物画などの作品を前に、「あのな~、新宿では絵がちいとも売れへんのや。こらぁなんとかせな~あかんで。巴里へは船はムリや、シベリア鉄道しかないがな。オンちゃんに、またぎょうさん叱られるわ。・・・かなわんなぁ」とタバコをくゆらす、佐伯祐三のめずらしいプロフィールをあしらってみた。
 小ロットだと印刷・製本代がメチャクチャ高いため、今回も2冊注文となってしまったけれど、ご覧になりたい方は、カフェ杏奴Click!に寄宿しているサエキくんClick!へ「見せて!」とお訊ねを。

■写真上:左は、第2版の『下落合風景画集』。表紙ビジュアルも変えて、今回は第二文化村の水道タンクを描いた「タンク」(1926年10月14日)だ。右は、今年6月に制作した初版。
■写真下:レイアウトも一新して、新しい写真や図版も増やしている。