前回の自宅外側Click!から、今度は建物に付随している場所を測定してみる。まず、いちばん気になった2階南側のベランダからだ。フォールアウトの両日、南寄りの風雨が吹きつけていたとすれば、南側のベランダがもっとも測定値が高くなる可能性がある。
 このベランダは、陽ができるだけ室内へ射しこむように庇(ひさし)を設けてはおらず、風雨がじかに防水コンクリートの床面へあたる環境だ。ベランダの縁に沿ってうがたれた、排水溝の表面は0.13~0.15μSv/hとあまり高くはないが、落ち葉が多少集まった角の排水口では、0.27~0.29μSv/hと、今回の自宅まわりの測定ではもっとも高い数値を記録した。しかも、ピーク時には0.40μSv/hの数値が出て、測定器の画面に「要注意」の黄色いポップアップが初めて表示された。やはり、南を向いた吹き溜まりのような箇所の放射線量が高い。
 次に、2階北側のベランダを測定してみる。北側のベランダには庇があって、直接雨が当たることはほとんどない。ベランダのたたき面は、0.09~0.10μSv/hと相対的に低く、排水溝から排水口にかけても0.09~0.11μSv/hと、南側ベランダに比べれば半分以下の数値だった。念のため、北側ベランダで雨が当たりそうな手すりを測ると、0.15~0.17μSv/hとやや高めとなる。さらに、2階のスレート瓦を葺いた屋根上は、0.11~0.12μSv/hという低い結果だった。おそらく、フォールアウトの直後の屋根上は高い数値を示したのだろうが、のちの雨でかなり洗い流されていると思われる。
 
 
 次に3階へ上がり、南側のベランダを測る。ここにも庇はないが、たたきの上には一面にスノコ状をしたプラスチック製の敷き物が敷いてある。その表面は、0.13~0.15μSv/hと思ったほど高くはなかった。また、3階北側のベランダは、テーブルやイスを持ちこめるぐらいの広さがあるのだが、庇を設けてはおらず、当然、風雨に当たる面積も大きいことになる。
 たたきの表面を測定してみると、0.17~0.19μSv/hと少し高めの数値を示した。最上階の屋根が、やや鋭角の三角形をしているので、そのままフォールアウトの風雨にさらされたか、風が北側へまわりこんだ可能性もありそうだ。3階のベランダから測った、いちばん上の屋根表面は0.10~0.12μSv/hとかなり低い線量だった。それに対し、屋根の縁へ設置されている雨どいの中を測定すると、0.18~0.20μSv/hと相対的に高めだった。雨どいには、屋根から降雨で洗い流された土埃や落ち葉などが溜まりやすく、そこに放射性物質が滞留しているのだろう。
 以上のような測定状況を踏まえるなら、少なくともわたしの家では建物の陰になった北側、および東側の放射線量がかなり低く、フォールアウト両日の風雨が吹きつけたと思われる南側、または吹きこみが多かったと思われる南西側が、相対的に放射線量が高い・・・という結果となった。でも、わたしの家から数百メートル離れた家屋では、おそらく地形のちがいや風向きのちがいによって、また異なる計測結果が出るのかもしれないが、およそ自宅から半径50mほどの家々では、同じような測定結果が出るのではないかと想像している。
 
 さて、測定で0.27~0.29μSv/h(ピーク時0.40μSv/h)とかなり高めの放射線量が出た、南側ベランダの排水口付近の「除染」作業を試みることにする。汚染を取り除くといっても、ことさら特別なことをするわけではなく、ふだんからやっているベランダ掃除とまったく同じ手順だ。まず、排水口近くに溜まった落ち葉や土埃を、手や箒を使ってていねいに取り除く。次に、排水溝から排水口へかけてバケツで水を流し、残っていた細かな土埃を洗い流していく。
 放射線量が高かった排水口の近くは、特に水を何度か多めに流し、柄付きのタワシで表面をゴシゴシこすって掃除をする。最後にもう一度、排水溝へ水を流して土埃を洗い、表面が乾くのを待って改めて測定してみる。結果は0.16~0.17μSv/hと、掃除前に比べ0.10μSv/hほど値が低くなった。ピーク値も、それほど高い数値は出ない。
 ただし、わたしの感触としては、かなりていねいな掃除をしたつもりでも、放射線量が劇的に下がることはない・・・ということだ。毎年暮れに行なう大掃除レベルのクリーニングをしても、放射線量を半減させることはついにできなかった。やはり、定期的かつ持続的で地道な清掃作業により、少しずつ数値を下げていく以外に方法はなさそうだ。一度付着してしまった放射性物質は、ちょっとやそっとのクリーニングではなくならず、かなりしつこくてガンコだということなのだろう。特に、もっとも多いと思われる各種セシウムは、コンクリートの微細な凹凸へ付着してなかなか流れないのだろう。
 
 

 自宅の北側にあるケヤキの大樹から、今年も冬になると大量の落ち葉が降ってくる。現状では、北側の数値がおしなべて低いけれど、冬場には南側との放射線量が逆転するのかもしれない。それを考えると例年の落ち葉掃きに加え、さらに憂鬱な冬が待っていそうだ。

◆写真上:毎年、大量の落ち葉を降らせる大ケヤキだが、今年の冬はことに憂鬱だ。
◆写真中上:もっとも測定値が高かった2階の南側ベランダ排水口(上左)と、同じように落ち葉や土埃の堆積があるにもかかわらず室内並みに値が低かった北側ベランダ排水口(上右)。放射線量がかなり低めな2階屋根上(下左)と、やや高めな3階の北側ベランダたたき表面(下右)。
◆写真中下:測定値がかなり低めな最上屋根(左)と、値が高めな3階の雨どい内側(右)。
◆写真下:上・中は、南側ベランダ排水口の除染掃除。一度の洗浄作業で、測定値が約41%ほど下がった。下は、自宅内各所の放射線測定値。(2011年8月12日現在)