すでに屋敷の建てかえが、かなり進んでしまった第三文化村の中で、おそらく開村当時とまったく変らない風情を保っているのがO邸周辺の緑地帯だ。O邸自体も、前面にある建物の屋根と外壁がリニューアルされただけで、ほとんど大正期の面影をそのまま今に伝えている。
 わたしが70年代の半ばに、初めて第三文化村を訪れたときにも、O邸のお屋敷はひときわ目立っていた。それは、武蔵野原生林をうまく取り入れ、手入れがゆきとどいた庭木を配した邸宅のデザイン全体が、とても洗練されているように感じたからだ。当時は敷地を囲むように、真っ白な背の低い木製の垣根が連なっていて、その白さがいつ見ても変らなかったところをみると、こまめにペンキを重ね塗りされていたに違いない。門から玄関まで10m余もあるだろうか、和洋折衷のどこかロッジ風の古い建物も、たいへんしゃれた印象だった。
 現在は、前面の2階家の外壁がリニューアルされ、明るい色彩に変わったが、玄関の扉や窓枠など、元の屋敷そのままの装いが保たれている。旧屋敷に対する愛着が強く感じられて、とても好ましい。このリニューアルがあったぶん、背後の和風建物の部分が少しかすんでしまった。
 また、このO邸をすぎた西坂の手前左手にも、こんもりとした森がそのまま残っている。お屋敷自体は森に隠れて見ることはできないが、涼やかな竹林と和風の門構えから、純和風建築の邸宅だと想像できる。このお宅をすぎると、すぐ左手に西坂公園があり、そのまま西坂を下っていくと下落合駅へと抜けることができる。つづきは・・・

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■写真:第三文化村の面影をそのまま伝える、森の中の屋敷。